赤坂・カナダ大使館オスカーピーターソン・シアターで、堂にいった1978年カナダ人ジャズ歌手(2007年12月27日)のショウケースの実演を見る。同行したカナダ人ピアニストのサポートにて、悠々とスタンダードを歌う。それに接して、まず思わずにいられないのは、格好いいナということ。ずっと痩身のままだし。そして、振る舞いも洒脱かつナイス・ガイっぽく、その手のエンターテイン流儀をきっちり得ているとも思う。6年前にインタビューしたとき、ほんといい奴だった記憶が蘇ってきた。彼はこの9月の東京ジャズにも出演し、そこには八代亜紀(2012年11月9日)がゲスト入りする。

 その後は南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)で、頭を下げる同業者多数の、大御所ドラマーであるバディ・リッチ(1917〜1987年)の名前が冠されたビッグ・バンドを見る。サックス・セクション4人、トロンボーン・セクション3人、トランペット・セクション4人、そしてピアノ(ときにキーボードも弾く)、電気べース(ピーター・ガブリエル・バンドや後期キング・クリムゾンのトニー・レヴィン。1970年代にリッチ・ビッグ・バンドに在籍していたことアリ。元々スキンヘッドだし、サングラスをしていたためもあってか、あまり老けていないように感じた)、そしてドラムという編成なり。

 なぜか、ドラマーは3人もいる。派手なメッシュが黒い長髪に入ったロックっぽい外見のグレッグ・ポッター(レギュラー・グリップで叩く。いい奴そう)、著名ドラマーのピーター・アースキン(レギュラー・グリップで叩く。ミュージシャンの格を考慮してか、彼のドラム・セットはステージ中央最前列に置いてある)、見た目は只のあんちゃん風情の孫のニック・リッチ(マッチド・グリップで叩く。ドラム・セットはポッターと共用。叩き音、ドカスカと大きい)という内訳で、彼らは入れ替わりで数曲づつ叩いたが、それは名手バディ・リッチのキャパは平気でドラマー3人分あったと語るため? 生理的に煩雑になるし、アースキンのゲスト入りはなしでも良かったのではないか。でなきゃ、1曲ぐらい、故人のスケールの大きさを偲んでツイン・ドラムでやる曲があっても良かったかも。

 途中で1曲、娘のキャシー・リッチ(つまりニック・リッチは彼女の息子)が出て来て、「ザ・ビート・ゴーズ・オン」を歌う。それを聞いて、翌日見る予定の公演のことにちょい思いはつながる(明日の、本編原稿外に続く)。

 そのソニー&シェールの1967年ヒット曲である快活R&B調曲「ザ・ビート・ゴーズ・オン」は「ザ・サイドワインダー(リー・モーガン)」的リズムを採用できることもあり、当時のジャズ・マンが良く取り上げていて、バディ・リッチ・オーケストラも彼の67年作『ビッグ・スウィング・フェイス』でカヴァー。そして、そこでヴォーカルをとったのがまだ子供の声をしているキャシーだった。キャシー・リッチがステージに出て来てその曲を歌う前には、1970年代初頭(と、思う)のリッチ・ビッグ・バンド・ウィズ・キャシーの実演映像が会場内にさらりと流され、そこから実際のパフォーマンスにつなげられた。それにしても、金髪に染めていたキャシーさん、見た目は鬼のように若い。かつ、なんかサバけていて、いい感じ。遠目には、下品な書き方をすれば、オレいけるかもと思えたほど。わあ。


<今日の、二の足>
 昨日もそうだが、今日も雨。また、けっこうな降り具合。なんか、外に出る気がなくなっちゃう。そんなわけで、ちょっと個人的な用事をすませるとともに試写会に行く予定でいたのだが、やめにしてしまう。ここ数日、気温はあまり高くないのは救いではあるのだが、雨はいやだなあ。梅雨を感じるなあ。そんなわけなんで、昼間は外出せずに、完成させるのは先でいいと思っていたインタヴューを起こし、原稿を仕上げてしまう。我ながら、いい加減なんだか真面目なんだか。

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