わー、こんなのあるんだァ。びっくりし、なんか感動を覚えた。いわきアリオス・中ホール。

 いわき市の複合文化施設“アリオス”の開館5周年(震災時には避難所になり、それを経て再び稼働していく様は、「文化からの復興 市民と震災といわきアリオス」という本になっている。水曜社刊)を祝う公演。渋さ知らズ(2010年9月19日、他)はホール公演をするだけなく、<音楽>、<ダンス>、<パフォーマンス>、<アート>と4つの枠組みのもと〜それは、いみじくも渋さ知らズが抱える広範な表現領域を指し示す〜市民ワークショップを開催。そして、その参加者たちは渋さ知らズ大オーケストラの公演にも参加するという設定なり。4つのワークショップにはそれぞれ10人強の人たちが参加し、<音楽>組以外は高校生の比率が高かったよう。不破大輔(2011年7月10日、他)以下のコア・メンバーは早々に現地入りをし、木、金、土曜と3日間のワークショップを行い、日曜日の本公演にのぞんだ。

 ワークショップ最終日となる土曜日17時から30分間、渋さ知らズ選抜隊&ワークショップ参加者たちはいわき駅前周辺を演奏やダンスしながら練り歩くという野外パフォーンスを行い、そこから見ることができた。“夜明け市場”と名付けられた、被災した方たちが飲食店を出しているという小径を含む一角を数周。やはり生理的にカラフルで、やんちゃにサバけている。こういうとき、すちゃらかした「本多工務店のテーマ」は映える。どんどん人も集まって来て、パレードをする面々の後を追ったりもし、いろんな人のワクワクが呼応しあうのが手に取るように分り、とっても愉快。こんなに冷たい視線を向けられない、アウェイ感ゼロの路上演奏も珍しいと感じた渋さメンバーもいたようだ。

 日曜日のホール本公演は、「A Song For One」や「フィッシャーマン・バンド」や「ナーダム」など、おなじみの曲のもと伸縮自在に3時間。驚いたのは、<音楽>ワークショップ参加者たちは当日にどさっとやってきた大オーケストラ構成員たちと分け隔てなくステージ上に始めから終わりまでいて、重厚なアンサンブル音に関与するだけでなく、重要ソロ・パートをふられた人もいたこと。一方、<ダンス>、<パフォーマンス>、<アート>のワークショップ組は曲や局面におうじてステージに出てくるのだが、それらも違和感なく噛み合う。さすが、3日間の準備の甲斐がありですね。とともに、彼らのキラキラした意気や所作はきっちりといつもの渋さ知らズに新しい動機や衝動をもたらしていたののは疑いがない。

 渋さの若いいわきの仲間たちは思い思いの格好で跳ね、踊り、肉声をだす。インターナショナル派でもある百戦錬磨の中年集団と彼(女性のほうが多かったはずだが)らは一体となり、触媒にもなりえる。その様には、小さくない感慨をえる。プロとかアマチュアチュアとか、出自とか、年齢や性別とか、そういう属性を超えた部分で、胸を張ったそれぞれのワタシが重なり合い、大きなアークのようなものをこしらえる。ワークショップ参加者たちは、“お客さん”ではなかった!

 見事な、創意と歓び溢れる、いろんなものがつながったお祭り。しなやかにして、なんか生理として太く強く。すげえな、渋さ。いいぞ、ワークショップ参加者たち。“ワン・サイズ・フィッツ・オール”というフランク・ザッパのアルバム・タイトルも、なんか頭にうかんだかな。そして、その底に横たわっていたのは、なんでもアリ〜面白がりの精神であり、表現とは垣根を持たない自由なものという真理であり、それらはシェアされてナンボという哲学ではなかったか。

<今夏の、渋さ>
 9カ所ほど、欧州フェスを回るよう。今年は南仏、スペインやポルトガルなど、ラテン圏が多いみたい。

コメント