アビア

2013年4月25日 音楽
 いやはや。びっくり。こんなに確固とした味、世界を持つ御仁であるとは。今年のトップ5の公演に入るかと思う。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 2006年にジェレマイアという名前で、どこかダニー・ハサウェイの世界を良質に昇華した感じも少し持つ静的かつジャジーなオーガニック・ソウル傾向作を出していた人物(NY州ロチェスター生まれ)だが、なんと彼はジャズとアーバン〜現代ブラック・ポップ路線を自在に束ねるロバート・グラスパー(2013年1月25日、他)のいとこなのだとか。なるほど、アビアと名義を代えての2012年新作『Life As A Ballad』(Madoh)はグラスパーが参加している。

 ギター(エレクトリックとアコースティックを使い分ける)、ウッド・ベース、ドラムを従えてのパフォーマンス。ギター奏者とベース奏者は非アフリカンだ。意外だったのは、ピアノを弾きながら歌うのかと思ったら、基本は中央に立ち、ヴォーカルに専念していたこと。ピアノを押さえながら歌ったのは4曲ぐらいだったか。だが、そんなことは些細なこと。ちゃんと主役の意を汲むバンドとともに、彼はなんとも清新な、オルタナティヴなソウル・ミュージックをあっと驚くほど鮮やかに送り出していたのだから。含みのある、スピリチュアルという形容もできるだろう自作曲(1曲は、プリンスの「ホエン・ダブズ・クライ」の超静謐カヴァー)を、彼は抜群にコントロールされたファルセット・ヴォイス(大学でオペラをやっていたという経歴にも納得させられる瞬間もあるか)のもと広げ、そこにはちょっと例をみない澄み超然とした世界がぽっかりと浮かび上がる。うわー、すごい。ただただ、ため息。マジに。

 で、大きく頷かされたのは、そうした手触りを彼は実に慣れた感じで、完璧に生の場で開いていたこと。普段、頻繁にライヴ・パフォーマンスをやっているとも思えないのだが、それに関しても、彼は非の打ち所なし。すげえ、実演能力。日本語の挨拶もイントネーション確かで心がこもっていたし、聞き手に大きく手を開いた態度を見せるのも巧みで、自然。バンドも皆無名の人たちだが、それぞれ腕は確か。

 なお、アビアは米フォックスTVのドラマ「ラスヴェガス」にMIT出の配車係役で出てくるジェイムズ・レジャーが大きくなり、堂々とさせたような感じ。こんなに素敵なライヴをあっさりと享受できてしてしまっていいの、彼があまり有名じゃなくていいの……。どこかで、ぼくはそう思いながらショウに接していたかもしれない。

<今日の、そうなのか>
 ここのところ、携帯電話の電波が地下鉄でおおいに通じる。どうせ、車内は通話できないのだから、どっちでもいいぢゃん、メールなんか駅に止まっているときに送ったり受信したりすればいいぢゃん、と、ぼくは思っていた。だが、ネットを車内にいて使えるのはすこぶる便利と友人は言う。フェイスブックやツイッターを見たり、書いたり。そうか、携帯でネットを見るという習慣がないぼく〜とうぜん、ガラ携使用者ですね〜は、そんなこと思いもよらなかった。よくもまあ皆、フェイスブックやツイッターをマメに見る時間があるなーと思っていたら、そういうことなのか。ぼくは、1日0.8回ぐらいみるが、30件ぐらい見ると、飽きてしまうことが多い。たまに有益な情報を得るとは分っていても。

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