前日に続いて、渋谷・東急シアターオーブで開かれている、<JAZZ WEEK TOKYO 2013>の一出し物。最終日となるこの晩の出演者は、ブラジルの異才にして音楽偉人であるエグベルト・ジスモンチ(2008年7月3日)と、息子のアレシャンドレ・ジスモンチ。ヒッピーじじい風情の父親に対して、息子の見てくれはお行儀良い真面目青年そのもの。その対比は、コンサート後の知人たちとの飲みの席でも話題に上った。会場では知り合いといろいろと遭遇、ブラジル音楽ファンはもちろん、ジャズの聞き手やプログ・ロックの愛好者、そしてプロの演奏者まで、いろいろ。そして、その事実は彼の素敵を語るものにほかならない。

 パフォーマンスは2部制にて。1部は、10弦のギターを持つエグベルトと、普通のガット・ギターを持つアレシャンドレのデュオ演奏。父親の演奏はときに、ビリンバウを想起させるような感じのときも。うなずく。途中で、息子は2曲、ソロ演奏のパートも与えられる。新種のブラジリアン・ジャズと言えそうなリーダー作を持つ彼だが、クラシック音楽教育も受けた人なんだろうな。2人、譜面などは一切置かず、とてもナチュラルに、精緻なのにおいしい棘や凸凹も要所で持つギター共演を披露。ECMから2009年にリリースされている『Saudações』はアレシャンドルとキューバの女性室内弦楽グループのカメラータ・ロメウとジスモンチ三者連名のアルバムで、エグベルド曲を素材にクラシックから南米音楽までを自在に横切る現代感覚にも富むインストメンタル作だ。

 2部は御大のみが登場、12弦ギター演奏を2曲、ピアノ・ソロ演奏は3曲。その後は、ピアノとガット・ギターの父子デュオとなり3曲やる。さらに、アンコールも1曲。ぼくはエグベルトのギター演奏よりもピアノ演奏により魅力を感じる者で、よりセカンド・セットのほうに身を乗り出す。そのピアノ・ソロの2曲目はストラヴィンスキー曲をどこか想起させるような開き方をしていたかも。まあ、ほとんどクラシックを聞かない(そんななか、ストラヴィンスキーはほんの少し例外)ぼくであるので、この項、軽く流してくださいナ。作曲家である事と即興演奏家であることが自由に綱引き、かついろんなな音楽様式をワープする形で、どこにも属さないような有機的演奏が場内に満ちる様はやはり絶品なり。いやはや、であります。

<今日の、捨て身の応援>
 ばくが世界で一番好きなラッパーである、下町兄弟の『LIFE IS HELL』(SHIBAURA RECORDS TSR-112)が出る。タイトル曲を含む2曲、そしてそのヴァージョンからなる全10曲入り。タイトル曲はちょいエスノな、ファンキーなシンセ音もいけてる新機軸曲。やっぱ、ビートの感覚/グルーヴが内在しまくる早口フロウはカッコよすぎ。肉感的な喉力、抜群! それについては、やはり日本で一番だと思う。皆、きいてきいてきいて。4月1日発売、当人のHPほか(試聴できます)、アマゾンやタワーやHMVなどで買う事が可能なよう。

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