もうひとつの音楽性や提出の仕方を求めている越路姉妹(2009年10月12日、他)の越路よう子の新バンドを代官山・晴れたら空に豆まいて で見る。シンガーはもう1人、ちゃんと歌える男性もいて、ツイン・ヴォーカル編成。へえ。今、レコーディング中だそうだが、バンドは皆黒のスーツ系が基調。なるほど、下世話な越路姉妹と一線を画して、エレガントに行きますという感じであるのか。その様を見て、デイヴィッド・ヨハンセン、改めバスター・ポインデクスターのかつての洒落のめし小洒落路線を想起する。こちらはホーン隊はいないし、ジャジーな曲は少し。でも、粋な社交の場の洒脱音楽を提供するというのは重なるか。なにより、ヒネリある諧謔や視点がどこかにあるという構図は近いかも。大げさに言えば、”ロック芸”の積み重ねの、不可解な妙?

 そして、出演者のもう一組は、完全ジャズの担い手。すごい、ブッキングだァ。こちらはピアノの南博(2011年3月2日、他)とソプラノやアルト・サックスの津上研太(2011年6月23日、他)のデュオ。なんでも、南は病気療養していて、この晩が久しぶりのライヴとなるという。頭のほうはフリー・フォームと言いたくなる、瑞々しい対話演奏をずっと聞かせる。さすが実力者たちだなと頷く。

<今日の、1940年代生まれ>
 この項に書こうとしていて、忘れていたことを書いておこう。トニー・ヴィスコンティ制作、デイヴィッド・ボウイ(1947年生まれ)の10年ぶりの30作目となるアルバム『ザ・ネクスト・デイ』の先行シングル・カット曲「ホエア・アー・ウィ・ナウ」が、とってもグっと来る。諦観路線にあるが、なんとも誘う力がハンパない。ぼくの同年代の聞き手にはボウイを神格化している人がいるが、全然そうじゃないぼくにしてそう思えるのだから、静かながら多大な訴求力を持つ曲なのだと思う。そして、ぼくはそれと続けて、カエターノ・ヴェローゾ(1942年生まれ)の新作『アブラッサッソ』を違和感なく聞いたりもする。ヴェローゾ制作のボウイ曲……これまでそんなこと、考えたこともなかったが、今それを切望する自分がいる。今日、東横線の渋谷駅で格好いいと唸らせる初老の紳士を見かけたことで、この件を思い出した。1940年代生まれというと、仕事をリタイアしている人も多いのか。

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