青山・プラッサオンゼで、2グループを見る。ぐうぜん、リーダーがともに飲み屋経由で顔見知りだなあ。

 まず、広義のラテン/トロピカルほのぼの情緒を持つ手作りポップを送り出すコロリダス。歌とギターを担当するリーダーのしみずけんたにくわえ、ウッド・ベース(を担当の、ぽん は2000年代後期にキューバでカチャイート〜2001年11月21日〜に師事、そのとき高齢の名人は亡くなったという)、スティール・ドラム、トランペットという編成。普段はもう1人打楽器奏者が入って、5人でライヴをすることが多いらしい。ともあれ、どこか人を喰ったところも持つ、天真爛漫さも覚えさせる、ペーソス溢れる、人懐こい弾んだポップ曲をきかせる。言葉がちゃんと聞こえるのがいいよね。彼らのビールの歌は、ビールが飲みたくなる。彼ら、2週間前にもここでライヴをやり、重なるお客さんもいるというので、この晩は普段はあまり披露しないブルジル曲カヴァーをいくつか披露したりも。1番はポル語歌詞で歌っても、2曲は自らつけた日本語歌詞で送り出すのは彼ららしいか。この日はどちらかというと、少し格調高いコロリダスであったらしい。

 続いては、カンタス村田とサンバマシーンズ(2012年10月27日、他)のベーシストでもある渡辺健吾が率いるトリオ・バンド。彼にプラスし、さいとうりょうじ(ギター)と副島泰嗣(ドラム)。これが初ライヴらしいが、メンバー名を綴ったバンド名は少し気がなえるなあ。インストと渡辺が歌うヴォーカル・ナンバー(たぶん、ブラジル曲)が半々ぐらいづつ。まあ、どっちにしろインスト部はたっぷりとられているのだが……。ん。あ。ああああん。なんと、ギタリストは本場ブルース・マンのように堂にいったピックを用いない奏法で演奏しているのだが、徐々にぼくはそのギタリストの一挙一動に釘付け。

 えええ、こんなギタリストが日本にいたの? もう引っかかりたっぷり、そして存分に味と歌心アリ。感じとしては、米国ヴェテランの激渋アフリカ系プレイヤーという感じ。あとコードの分散〜発展の仕方ははジョン・スコフィールド(2012年10月10日、他)に近い部分があるかもしれない。本人はここ数年デレク・トラックス(2006年11月20日、他)にやられていると言っていたが、なるほど、(この日はスライド・バーをはめなかったが)彼のギター演奏に近い部分もあるか。ぼくの趣味ではトラックスより彼のほうがグっと来る。あ、全身でクライしているような感じでギターを弾く様は山岸潤史(2012年9月8日、他)を思い出させたりもする? ありったけの含蓄と閃きのもと、えも言われぬフレイズが溢れ出る。なのに、彼はまだ(おそらく)20代、いやはやすごすぎ。エリック・ゲイルみたいな演奏もお手のものだろう。

 普段はアメリカン・ロックぽいバンドをやったり、1人でギター弾き語りなどもする人のようだが、この晩のようなブラジルっぽいことはしていないようで、やる曲のコードがいつもより100倍多いとMCで言っていたような気もするが、それもきっちり味ありでこなす。彼は一時は鍵盤をやっていたこともあるというし、譜面もOKのよう。じゃなきゃ、今日みたいなこと器用にできないよな。この晩のブラジル調楽曲とギター演奏のうれしいミスマッチな様は、「レッツ・ダンス」期のデイヴィッド・ボウイにおけるスティーヴィ・レイ・ボーンというか、ウィルコ(2010年4月23日、他)に入ったフリー・ジャズ・ギタリストのルネス・クライン(2010年1月9日)のようというか、トム・ウェイツやエルヴィス・コステロ(2011年3月1日、他)におけるマーク・リーボウ(2011年8月4日、他)の如しというか。そうか、今日の演奏だと、偽キューバ人プロジェクトにおけるリーボウの演奏が生理的に近いかもしれない。綻びと歌心のマリアージュ、ということで。あ、ぼくがプロデューサーだったら、即刻リーボウとお手合わせするアルバムを企画しちゃう? ケンゴくんには、こういうギタリストとできるのだったら、ビル・フリゼール(2011年1月30日、他)のアメリカーナ路線のブラジル楽曲版みたいなことをすればと注進した。

 さいとうりょうじ というギタリストに着目してきている人には何を今さらという感じだろうが、初めて接したぼくは仰天、ケラケラ笑いながら衝撃を受けまくった。おそらく、2013年最大の音楽家との出会いになるのではないか。いやはや、ぼくの好みのギタリストの大ストラク・ゾーンじゃ。

<今日の、破綻>
 節分だ。近年、スーパーやコンビニの恵方巻き商戦がハンパなく、ぼくはなんとなく戸惑っている。急に、そうなっちゃったよな。実は食べたことないのだが、多少豪華目の太巻き、にしか思えないが。機会があればよろこんで試すが、無理して食べるものでもないだろうと、ぼくは判断してしまう。もともと西日本のアイテムと聞いたことがあるが、ならばずっと知らなかったのも合点が行く。でも、ある関西人は、そんなの知らねえと言っていた。豆じゃあんまり儲からないところ、エンギものとしてお金を引きだせる<節分に恵方巻きを食べましょう>というヘンてこ行為を、あれだけ世に広めた仕掛人側の手腕には舌を巻く。やっぱ、日本人ってイヴェント好き? 今日、如才ない知人がライヴ会場に2種類の恵方巻きを差し入れとして持って来た。で、年ごとに変わるラッキー方角に向かい一気食いすると幸福が訪れるとか、講釈をたれやがる。あんな太いの一気喰いできる人いるのか。挑戦した人はみんな失敗していたような。爆笑。とってもマンガな、破綻をはらんだ習わし/食い物であるのを、ぼくは知った。

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