この<根暗さ>はすげえな。と、書くと、否定的なニュアンスも出る? いや〜、昼間に快楽的なことにかけては70年ごろのUKロック・バンドのなかでもトップ級であると言わざるを得ないフェイシズの長目の原稿(シンコーから出るスモール・フェイシズ特集ムック用)を書いていて、その音を聞きまくった後にクリス・ポッターたちの音に接したので、余計にヒィ〜とはなった部分はあると思う。けど、今ここまで真摯に尖りを含む暗さを出せる人がどれだけいると言うのだ。それこそは、タイトなビートや電気系楽器も採用し、一歩間違うとハード・フュージョン的な印象を与えることになるかもしれないポッターのグループ表現の生命線であり、リアル・ジャズであらんとする彼の強い意志の発露であると思う。

 技巧と現代感覚を天秤にかけることに自覚的な通受けリード奏者のリーダー・グループの公演は、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)にて。彼はパット・メセニー(2012年3月3〜4日、他)のこの夏の欧州ジャズ・フェス・サーキットに、ベン・ウィリアムズ(2012年3月3〜4日、他)とアントニオ・サンチェス(2011年7月20日、他)とともに同行することにもなっている。なんでも、その新カルテットでレコーディングもすませていて、ツアーに合わせてリリースされるという情報もある。

 テナーとベース・クラリネットを吹く当人(1971 年生まれというデーターよりけっこう年長に見える)に加え、アダム・ロジャースとフィマ・エフロン、ネイト・スミスという布陣にて。ノラ・ジョーンズのデビュー作他いろんなアルバムに参加するロジャースは浮遊感ある響きのギター演奏を志向し、デイヴィッド・トーン(2000年8月16日)やデイヴィッド・フュージンスキ(2012年2月10日)らギタリストから評価の高いエフロンは電気ベースに専念。そして、デイヴ・ホーランドのグループにも在籍するスミスの叩き口(マッチドとレギュラー・グリップを使い分け、シンプルなキットを身を乗り出して叩く)にはけっこう驚く。クリス・デイヴ(2010年12月16日、他)ほどほころびてはいないが、十二分に今っぽい立ちと気持ちよいズレの感覚を持つビートをごんごん送り出していく様にはイエイ。が、一方、コンビを組むエフロンには少し否定的な感想を得る。自分でもジャズは縦ベースじゃなきゃというこだわりが強すぎるのは自覚するが、やはりこの晩もベーシストがウッド・ベースを弾いていたならどんなにもっと入り込めたかと思ってしまったからな。悪い奏者ではないはずだが、グルーヴをそれほど前に出さない技巧的エレクトリック・ベース演奏をぼくは好きじゃないんだろう。そういう場合、“ペラ男奏法”なんて揶揄したりするワタシであります。

 アンコール曲は2006年作で披露していた、レディオヘッド(2008年10月4日、他)の「モーニング・ベル」。ポッターはオリジナル志向のジャズ・マンながら、ときにロック曲を取り上げている。

<ここのところの、妙>
 いい気候だが、陽が暮れるとけっこう涼しさを覚え、過去もこの時期はこんな感じだったけかと思う。寝る時なんて、ちゃんと行儀よく布団にくるまって寝ているものなあ。海外に出向くと昼夜の寒暖の差が大きくおおおとなる場合が往々にしてあるが、今年はそういう経験を思い出したりたりも。それから、気候で妙といえば、ここのところ天候の急変も多い。晴天と思っていたら、急に暗くなって雷がなったり、雨がザーっと降ったり……。今日もライヴを見に出たら、晴れだったはずなのにほんの少し雨がちらつき、傘を持つ。

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