毎年日本にやってきていろんな顔を出してくれる在NYカメルーン人のボナ(2011年1月25日、他)だが、今回はこれまでになく、変化ありと書けるか。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 トロンボーンとトランペットの2管楽器(サックスが一角を占めることもあるがここのところの来日はずっと2管でことにあたっている)、ピアノ、2人の打楽器、そして、歌と電気ベースのボナという布陣。電気ギターとドラム奏者がいないというのは初めてのことで、鍵盤奏者も電気キーボードは使わずアコースティック・ピアノに専念するというのも初めてのこと。で、そんな編成で何がやりたかったかと言えば、ラテン・ミュージックだったんですね。一時、ブラジル音楽色を強めたボナは徐々にラテン濃度の強いことをやるようになってきたのは事実なのだが、ここまで徹底して中南米志向をとった実演するのは初。それが如実に表れているのが、ドラムレスという編成なのですね。

 過去のアフリカ色を持つボナ自作曲もラテン調で披露。打楽器を担う2人のキンテーロさんはベネズエラ出身の従兄弟とか。ホーン音のリフもはまり、ピアニストのオスマニー・バレーデスはラテン流儀に沿いつつ、ときどきジャズ的にはみ出すフレーズを突飛に出したりする。それソロをとる時間の短さからくるイビツさであると判断したが、事情通によるとヨスバニー・テリー(2010年8月22日)とも仲良しらしい彼のリーダー作は不埒とカっとびが共存するラテン・ジャズ盤だそうだ。彼とボナは1曲、デュオで静かな曲も披露。その際、なぜかぼく、咳が止まらなくなって超困った。

 過去の公演、ボナは大好きなジャコ・パストリアス/ウェザー・リポート曲のカヴァーを必ず演奏してきたが、今回それはやらず。後半は、タップダンサーの熊谷和徳(2010年9月3日)が出て来て2曲お手合わせ。ちょっととってつけたような顔合わせだとは思ったが、噛み合いと妙味はなかなか。しかし、やっている姿が見えなきゃ、タップダンスは音のヴァリエーションが狭い只の打楽器音になってしまうわけで(この記述を見て、おこるタップ・ダンス愛好者がいるか)、ただでさえパーカッション音が目立つサウンドの中に入る熊谷は大変だったろうし、健闘していたと思う。

 次は、アーロン・ネヴィル(2004年9月18日)の出る、六本木・ビルボードライブ東京に。

 サポートは弟のチャールズ・ネヴィル(2000年1月12日、他)や前回のザ・ネヴィル・ブラザーズの来日公演(ぼくはスペイン行きと前後して見ることを断念した)にも同行した日本人ギタリストの福田眞國、アーロン・ネヴィルの近年のリーダー作に参加しているキーボードのマイケル・グッズらがサポート。ベーシストとドラマーはそれほど著名な人ではないと思うが、コーラスも巧みにつけつつ、間違いない演奏を披露。ようは、無理のない、いいバンドでした。

 ダック・ダンさんより1歳年上らしいアーロンさんはかなり元気な感じで、何より歌声がまったく衰えていない。もう、滑らかなファルセット・ヴォーカルが会場内にある余白をすうっと埋めていくかのように満ちる様には言葉を失う。顔つきも体躯も、なにもかもしっかり。良い良い、良すぎます。

 サム・クックの「グッド・タイムス」で始まったショウはヴァン・モリソンの「クレイジー・ラヴ」やホール&オーツの「サラ・スマイル」など意外なカヴァー選曲のもと、ゆうゆうと遂行されていく。ネヴィルズの「イエロー・ムーン」も歌ったけか? 終盤にはボブ・マーリィのメドレーもやった。どれも味わい深く、曲自体の良さと彼の妙味が解け合い……、あー夢心地という以外、何もいえないじゃないか! なお、MCで次のアルバムはドゥーワップ曲を歌ったアルバムであることを告げ、それ風のものもやった。その新作はブルーノート発でキース・リチャーズが制作関与という話もあるが。

 そして、露骨にニューオーリンズっぽいことはやらないのに、じわわーんとその味が横溢している様に降参。ぼくはかつてニューオーリンズに行った際、言葉を超えた“ゆらぎ”ともいうべき情緒を覚えたのだが、そのゆらぎをもっとも歌を通して出せる人物がアーロン・ネヴィルなのではないのか。あまりにいい感じのショウに接しながら、ぼくはそう思わずにはいられなかった。実はバンド音の出音はかなり大きかった。だが、アーロンの歌声はメロウきわまりなく、そしてどの楽器音にも負けていなかった。

<翌日の、わわ>
 朝の3時すぎまで飲んでいた。金曜にやはり同時刻まで飲んでいたときと、ほぼ同じ顔ぶれ。よく、ライヴで会うねー。よく、飽きないねー。ながら、例によって9時には自然に起きる。目覚まし時計をちゃんとセットするのは、年に10回もないかなー。普通、2度寝はしない(あまり、できない)のだが、J1の土曜にあった磐田と鹿島の試合放映を見ながら、またZZZ。で、次に起きたら17時すぎ。うわー。少なくても、ここ5日間はなんら根がつまること、疲れることは一切していないはずなのに。どーして、こんなに寝れる? 

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