川崎・クラブチッタ。おお、周辺の路地はお祭りの縁日のようになっていて、お囃子のような音楽も流れる。なんか川崎はりきってるなーと思ったら、いつもやっているわけではなく、たまたまやっている時にあたったよう。90年前後はスマッシュが川崎だけで首都圏公演をやることもあって、たまにチッタに行っていた(フィッシュボーンの公演後、仲間と駐車場で待ち合わせして、そのままスキーに行ったこともあったよなー)。が、それも2、3年ほどのことで、立て直されてからのチッタには初めて行く。

 汝、その名はブーツィ。もう、その事実を、目一杯かみしめることができたステージ。JBズ→P-ファンクと王道を歩んだ、天賦の才と天然を併せ持つ大ファンク野郎。今回はなんと黄金のP-ファンク鍵盤奏者たるバーニー・ウォレル(2007年8月7日)や百戦錬磨の熱血渾身ファンク・ロック大統領のT.M.スティーヴンス(ベースと歌。2001年10月31日)、70年代後期のブーツィーズ・ラバー・バンドにいたジョエル“レイザー・シャープ”ジョンソン(鍵盤)らを含む、10人を超える大所帯のバンドを率いてのもの。ホーン隊もしっかりいる。

 それにしても、T.M.の参加は本当にうれしいなあ。どういうきっかけで今回一緒にやっているかは知らないが、それもこれも<ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ>だから、と考えるのが正しい。そいうえば、生粋のニューヨーカーであるT.M.が初めてJBを見たのは10代頭の事。彼は公演会場のアポロ・シアターの裏口の辺にいると、ブーツィ・コリンズが誘って劇場の中に入れてくれたのだという。昔、bmr誌用にインタヴューしたとき(T.M.がぼくに“グルーヴ・ポリス”というあだ名を付けてくれたのは、その際だった)、彼はそんなことを言っていた。あのときの掲載誌が見つからないのではっきりした事は言えないが、年齢を考慮に入れると、それはブーツィではなくメイシオ・パーカーか誰かだったかもしれない。うろ覚え記載で、御免よ。

 ブーツィは入ったり、出たり。そのお際はおめしかえをする。彼が引っ込んでいる際は、TMがフィーチャーされるパートも。ベースは彼とブーツィでツイン・ベースになるときも。体力が続かないのかなーと思わせるところもあったけど、出てきているときは、ほぼ万全。イカれたファンクの素敵や様式美がこれでもか放たれ、もう絶対! 時に出てきた変な格好した女性ダンサーは嫁、またラッパーは息子なよう。ファミリー・ビジネスもソウル/ファンクの基本ですね。考えてみれば、彼はまだかろうじて50代なんだよな。10代半ばにしてプロ活動を開始、早熟叩き上げであることは美しいことかな。

 途中、大昔のJBのいろいろな実演映像が流され、それにも釘付け。やっぱ、こと踊りに関しては、MJ最大の影響源はJBであると痛感させるものが次々映る。ああ、アフリカン・アメリカン凄すぎ。とかなんとか、言葉を超えたファンクの形而上がテンコ盛り。ブーツィは客席におり、ファンにもまれながら延々と一人で会場を徘徊したりも。ああ、愛と心意気がありすぎっ。結局、二時間半はやったはず。くうっ。

 で、高速を飛ばして、幕張メッセ。サマーソニックの前夜祭的な、オールナイト・イヴェントに。クラブつながりのアクトやDJを用意し、3つのステージを用いる。

 会場入りし、22時半からやっているはずの、プライマル・スクーリーム(2009年1月28日、他)のステージに行く。すでに始まっていて、最初音が小さいと思った。成長や自信の裏返しで、淡々とやっているという感想も得る。もちろん、マニ(ベース)やバリー・ギャドガン(ギター)の助っ人入り。さらには、黒人女性歌手も今回はついていた。91年リリースの3作目『スクリーマデリカ』を再現するという名目を持つショウで、ほんとそうする。だだし、まんまの曲順ではなく、少しかえていたよう。

 20年後の光と陰、なんちって。ぼくは『スクリーマデリカ』に過剰に思い入れを持っていないので、身体の中を電撃がかけめくるということはなかったが、人によっては自分の20年間〜ロック生活を大好きなバンドとともに反芻する機会を持つような思いを得たらしい。うらやましい。ぼくにとって、そういうアルバムはとふと23秒間考えた。最後のほうにやった、非『スクリーマデリカ』曲に客が燃えていたのはご愛嬌。裏でやってた、フランスのバンドのジャマイカは映像が鮮やか。

 808ステイトのDJセットは肉体感横溢というか、派手に動いて、受け手を煽る。アンダーワールド(2000年11月24日、他)は例によって、効果的な音と美術の噛み合いで、大型の会場をきっちり“デジタル祭祀の場”に昇華させる。カール・ハイドに親近感を持っている(2010年6月24日、参照)ので、よりわくわく見れた


<今日の、理不尽>
 おいおい、ソニックマニア会場はなんであんなに飲み物売り場が列になっているのか。常軌を逸する。という、形容を使っていいものではないかなあ。なのに、最初から開けてないオフィシャル・バーがあったり、途中で閉まったり(売り切れた、よう)。混雑の理由は、入場者にドリンク・チケット(一杯ぶん、500円)の購入を義務づけたことがデカいはず。そりゃ、みんな並ぶわ。ぼくもプライマルの会場で一旦ならんだが、ぜんぜん列が進まず、少しは前で見たかったので飲み物購入を断念。車ゆえ、どうせ水しか買えなかったので片腹をさするぐらいで済んだが、ちゃんとお酒が飲める状況だったら、ぼくのココロは最大級に乱れたろう。うーぬ、とにかく、あまりに見通しの立て方が悪すぎないか。結局、最後はにっちもさっちも行かなくてドリンク・チケットの払い戻しもしたと、後できいたが。

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