ブラジル音楽に対する愛をきっちり下敷きにしつつ、自由に四方八方にポップに弾ける男女混合大所帯バンドの、アルバム発売記念ライヴ。南青山・月見ル君想フ。過去に見た2回のパフォーマンス(2010年12月27日、2011年2月11日)はイヴェント出演なためもありなあなあな感じで見させていただいたが、今回は真正面からじっくり見ちゃう。いろいろ、発見があったな。

 単独公演ということで、構成をちゃんと定めて、2部制にて。皆、1部と2部では衣装をかえる。セルフ・タイトルのデビュー作に収められている9曲を全部やったほか、同数の新曲やアルバム未収録曲もやる。それら、別に質が下がると感じさせることはなく、すぐにでも新作つくれるぢゃん。

 すべての曲を作り歌う(ときにギターを持つ場合も)カンタス村田を中央に、3人の打楽器、鍵盤、ギター、電気ベース、ドラム、4人の管楽器素者(トロンボーン、トランペット、アルト、テナー)という編成でパフォーマンス。ステージ後方に映し出されるプロジェクター映像を使いつつ、ショウはすすめられる。曲が始まる前にちゃんと曲名が映し出されたり(それ、フォークローレ系の公演に散見される様式と言えるな)、一人ひとりのメンバー紹介の際に用いたり。

 ちゃんと見て了解できたのは、バンドの中心線がしっかりしているな、ということ。ベース、パーカッション、ドラム奏者がまっとうで、何をやろうと変なことにはならないだろうと思わせられたもの。とくに、やたらうれしそうに叩くドラマーは強力。トロンボーン奏者がアレンジしているというブラス・セクション音もまっとうだし、アルト奏者は何気に確かなソロを取ったりする。女性打楽器素者が一部でコーラスをつけていたが、烏合の衆ぽく皆でもっともっとガヤガヤ肉声を出す曲があればもっと楽しいのに、な。

 あと、感じたのは、カンタス村田が、自分の歌い方を確立しているじゃん。まずバンド統率者として姿に目が向くが、じつは肝心の歌でも彼だけの味がちゃんとある。それを実感したのは、たとえば彼らの代表曲(かな?)の「route134」に改めて触れたさい。これ、考えてみると、最初のヴァースはスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ」(レッド・ホット・チリ・ペッパーズもカヴァーしていますね)に似ている。が、直接的にスライを想起する人はいないんじゃないか。というのも、その後の巧みな曲展開やブラジル音楽の機微を介したアレンジがモノを言うとともに、中央にあるカンタスの屈託のない歌い口がスライ的世界から闊達な日本人青年が持つ現環境にワープさせる力をちゃんと持っている! わあ。だから、カンタス村田とサンバマシーンズの楽曲として無理なく楽しめちゃう。

 繰り返しになるが、ブラジル愛好を根に置く、ブラジル系躍動や楽器音の配置が随所で効く。それもまた、楽曲を彼らならではのものにする。そうしたスキル/美点はDJ感覚にもつながると言えるのかもしれないが、そんな彼らの洒脱な折衷技量はクレイジー・ケン・バンドに繋がる部分があるかもと、ぼくはショウに触れながら思った。まだ大学を卒業したばかりのくせに、カンタスはなかなかサバけててわきまえたタレント性ももつし、やはり今後の展開をいろいろ期待したくなりました。

 サンバな露出を持つ女性ダンサーももちろん登場。今のところ一人だが(それ以上はこのクラスのハコだと大人数バンドゆえ、ステージ上に乗せるのはキツいか)、どんどん人気が出て女性ダンサーが沢山出て来るショウをやる日をちょい夢想……。


<今日の露払い>
 カンタス村田とサンバマシーンは大学のブラジル音楽愛好サークルから生まれたバンドというが、この日は、そのサークルの後輩たちよるサンバ隊が最初に20分ほど大勢でパフォーマンス。緊張しつつ一生懸命叩いたり歌ったりしている様に、めちゃ青春してるなとベタな感想を得る。で、ありゃりゃと持ったのは、みんな初々しいというか、子供っぽいこと。高校生が中心なんですよと言われたら、信じちゃう? 内面はどうか知らないが、見た目は全然スレておらず、イキがりもゼロ。うわあ、オレが大学のころを振り返り唖然。まあ、ぼくがいた音楽サークルは生理的に汚れていて、回りから浮いていたのは確かだが。彼(女)らが放つ素朴さに触れながら、それは彼らが特にそうなのか、それともこういう感じの大学生が今はおおいのかとか、約39秒考えちゃいました。



 ゴールデンウィークもおしまい。さあ、心機一転……。

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