まず、六本木・ビルボードライブ(ファースト・ショウ)で、ザップを見る。久しぶりに来日した昨年公演(2010年2月11日)を見て、2010年の来日ライヴの白眉じゃあとぼくを驚嘆させたファンク集団ですね。で、今回もただただ素晴らしかった。基本的な構成/ノリは前回と同じだが、用意された衣服は変わっていたし、ちゃんと練り込まれていたし、なによりやっていることが、尊すぎる。よくもまあ次から次へと、いろんな事をやるものだ。今回も女傑シャーリー・マードックは頭2曲で面々の演奏で歌い、皆で一度は引っ込み、1曲流した後に、再び男性陣が出てきて山あり谷ありのショウを延々と繰り広げた。そこには、ゴスペル(マードック)と世俗娯楽表現(ザップ)の間にはちゃんと線を引きたいという、彼らの気持ちが投影されているのだろうか。

 故ロジャー・トラウトマン(1999年5月6日、参照)が率いていたときよりいいかも、という、前回公演のぼくの記載を見て、それはないんではないのと言う、知り合いのロジャー・ファンのもいた。確かに、ロジャーは不世出の凄くクールなファンカー/ショウ・マンである。91年作『ブリッジング・ザ・ギャップ』(ワーナー・ブラザーズ)を出す際には取材もできたが、その秀でた受け答えと愛嬌ある笑顔には本当にポっとなった。とうぜん、彼の真価は判っているつもりだ。だから、こう言い換えよう。以前はロジャー(50ポイント)とバック・バンド(各30ポイント)の総合体だったのに対し、今はかつての指揮官/主役の穴を埋めようと張り切るミュージシャン(各41ポイント)の有機的集合体である、と。そして、皆が主役だと頑張る現在のザップのほうが、ポイント総計は高いとぼくは思うのだが。

 ともあれ、今回もぼくは楽しみ、ヤラレまくった。今、ファンク〜黒人芸能感覚/流儀の積み重ねを受けようとするなら、何をおいてもザップが一番。もしかして。プリンス(2002年11月19日)はそれ以上かもしれないが、彼の場合はチケット入手も困難だし、何よりこんな近くでは見るのは叶わないだろう。とか、いろいろ考慮すると、ぼくはザップを推したくなる?

 そして、上野へ。上野公演の水上音楽堂(今は場所が変わったが、かつてはステージが不忍池の上にあり;2002年1月20 日の項参照、名称は引き継がれている)で、アコースティック系パフォーマンスのフェス。終盤のほうだけを見る。立派な半透明の屋根が、会場上部に新たについていた。

 オーヴァー・ザ・ラインから見る。90年代はIRSやヴァージン/ナラダからアルバムを出していたこともあった、男女フォーキィ・ユニット。かつては、バンドでやっていたはずだが、今は簡素な構成になっているのね。その新作『ザ・ロング・サレンダー』はジョー・ヘンリー(2010年4月2日、4月4日)のプロデュースで、その話題があって、今回の来日につながったのかな。

 先のザップはオハイオ州のデイトン拠点で、こちらはオハイオ州のシンシナティ。オハイオ州はいろんなファンク・バンドを輩出するファンク・ステイトとしても知られ、JBで知られるキング・レコードもシンシナティにあった。でも……、シンシナティには89年にザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)の公演を見に行ったことがあったんだけど、少なくても中心部は白人しかいない整備された感じのある街だったので、オーヴァー・ザ・ラインのような担い手を輩出しているのもよく判る。

 基本、男性はキーボードを弾き、女性は生ギターを弾きながら歌う。思慮のある楽曲に、適度なひんやり感を持つ清楚な歌声。もう少し伴奏音が多いほうが魅力的になるとは思うが、アメリカの大人の歌やなあ、と感ずる。

 その後、先にそれぞれパフォーマンスしたはずのアン・サリーとおおはた雄一(2009年11月一日、他)がデュオで3曲、パフォーマンスした。

<今日も転々>
 とても天気のいい日。投票所に行った後に、芝公園、六本木、上野と移動し、最後は知人の手引きにより、アメ横の側にある肉屋さんがやっている食堂/飲み屋へ。一部の人には、有名らしい。ウォッチング・ザ・スカイは本来、大ヴェテランのフォーク・シンガーのランブリン・ジャック・エリオット(彼も、ジョー・ヘンリーが関与して、話題を呼んだ)が出演するはずだったが、それはキャンセルに。主催者はかなりねばったようだが、かなわなかった。それにともない、新聞原稿用にとるはずだった彼への電話インタヴューもとんだ。そういえば、先日ぐうぜん飲み屋で一緒になった招聘業務に携わる人は訪日に難色を示す相手に、エンペラーもちゃんと東京にいるんだから大丈夫と説得する、と言っていたな。

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