スリー・フレンズ

2010年12月18日 音楽
 70年代に熱心な支持者を集めたUKプログ(レッシヴ)・ロック・バンドであるジェントル・ジャイアントの残党たちによるバンドで、そのバンド名はその72年作のタイトルから。とともに、オリジナル・メンバーが3人いたことで、つけもしたのか。昨年に続く来日で、旧メンバーは2人となったようが、そのバンド名は引き継いでいる。南青山・月見ル君想フ、13時からのマチネー公演。柔和な日差しが気持ちいい、穏やかな昼下がり。陽が落ちると、それなりに冷えたが。

 ヴォーカル、ギター/コーラス、キーボード、ベース/コーラス、ドラムという布陣で、構成員はヤレた英国人たち。60代から40代にかけての人達か。昨年は7人編成だったそうだが、今年は5人にてパフォーマンス。昨年のギグは見ていないので比較はできないが、何ら過不足は感じない。楽器が重ならない分、楽器音の噛み合わせが明解に受け取り易い部分はあるだろう。で、やはり皆、腕はたつ。変テコな旋律を滑らか高音ヴォイスで悠々と追う歌うシンガーは相当な実力者だし、他の楽器担当者も本当にそう。べース奏者の弦を爪弾く方の右手はいろんな使い方をしていたな。ドラマーは“グルーヴ・ポリス”たるぼく(かつて、T.M.スティーヴンス;2001年10月31日、がそう名付けてくれました)にとっては“溜め”が足りないが、技術はある。パンク・ロック期以前の英国人ミュージシャンは上手い、とは言われるが、本当にそう思う。

 乱調は美に収束する……。いろんな仕掛けに富んだ、捉えどころのなさ/意外性がうれしい長尺ぎみ楽曲群はジェントル・ジャイアントの既発曲だったのだろうか。おそらく、それがすぐに解る人達がここには来ているのだろうナ。ともあれ、プログ・ロックを崇めないぼくでも、その真価、おもしろさは十二分に認知できた。なるほどと思ったのは、具体的なソロ・パートをあまり作ることなしに、アンサンブルの発展〜構成の妙で機微と機知と意欲に満ちた曲を紡いでいたこと。その確かな楽器音の噛み合いはカチっと定まりつつ、ちゃんと流動感を作り出してもいた。

 感心。レトロなところもゼロ。今、20代のバンドが同様のことをやったら、とんでもない新鋭とおおいに話題を呼ぶのは間違いない。でもって、同傾向のバンドが同地域から3つ4つ相次いだとしたら、いわゆる“ブルックリン派”のごとく、新たな切り口を与えて、ロック界は大騒ぎとなるのではないか。

 (追記)がーん。ドン・ヴァン・ヴリートことドン・グレン・ヴリート、あのキャプテン・ビーフハートが、17日に、ずっと患っていたという多発性硬化症のために死去(1941年1月15日〜2010年12月17日)。80年代にはいると画家に専念、その音楽からは離れて以降の仕事はちゃんとチェックしたことがなかったけど、けっこうショック。人は必ず死ぬ、それゆえ、鬼籍入りしても過剰に悲しまない(ようにする)ワタシではあるが、彼に関してはなんか……。ああ、イケてたカリフォルニアン。16日の最後の店で朋友の故フランク・ザッパのサタデイ・ナイト・ライヴ出演時の映像を見ながら、(変拍子&仕掛けありまくりの)サッパはもう生理的にキツくて聞けないけどキャプテン・ビーフハートはいまだ聞けるなんて、会話をしたばかりだった。比較的ポップなヴァージン期あたりの音楽性と重なるようなバンドをやってみたい、ナ。まあ、そんなぼくの願望とは別に、オルタナ人力ヒップホップのありかたの物凄い正解の一つとして、キャプテン・ビーフハートの行き方はおおいに参照されるべきもののはず。

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