ミシェル・カミロ・ビッグ・バンド。ザ・ヴァーブス
2010年10月26日 音楽 南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。立錐の余地なし、と、書きたくなる入り。そのリーダー(2002年10月3日、2010年3月25日)は毎度集客力を持つうえに、そんな人のスペシャル・プロジェクトと言えるだろう設定、しかもそのビッグ・バンドの構成員にはクリス・ハンターやデイヴ・バージェロンをはじめ有名奏者や敏腕奏者がずらりと揃っているのだから、そりゃあ混むよなあ。
ステージ上には17人。管奏者は、トランペット4人、トロンボーン4人、サックス5人。リズム隊のアンソニー・ジャクソンとクリフ・アーモンドは矢野顕子(2009年12月13日、他)が起用していた人たち(2004年7月20日)でもあり、さらに打楽器奏者が一人。奏者は皆NY在住だろうが、その打楽器奏者のアキーノさんは幼なじみとMCで紹介されていたので、ドミニカ人だろうか。彼とはデュオでやったりとか、何気にフィーチャーされていたな。実のところ、ぼくはカミロがビッグ・バンド表現もやる人であるのを知らなかったが、今回の顔ぶれとリズム隊や主要ソリストが少し重なりもする94年本国ドミニカ録音ビッグ・バンド作のCD+DVD商品が来日に合わせてソニーからリリースされたりもしたので、そうとう昔からビッグ・バンド表現にも目が向いていたのは間違いない。その作品で全ての作編曲クレジットは全てカミロになっていたが、この晩の演目はどうだったのだろう。
ハレの場での、娯楽の表現。そんなビッグ・バンド表現の特性をしかと踏まえた上で絢爛重厚なパフォーマンスは繰り広げるわけだが、満員の観客から相当に熱い反応を受けて、カミロもバンド構成員も本当にうれしそう。やはり、ビッグ・バンド・ジャズには、普通のコンボによるジャズ演奏とは別の機微がある。アンサンブル部のとき、カミロはピアノを離れて、指揮をやったりもした。ラテン的な曲は半分ぐらいはあったかしら。終盤の曲では管奏者たちがお客さんにクラーヴェの手拍子を促したりもし、会場はより華やいだ雰囲気でいっぱいになった。
そして、演奏が終わったとたん飛び出して、タクシーに飛び乗り、渋谷・アックスに。米国ポップ音楽界大フィクサー、スティーヴ・ジョーダン(2005年11月13日、2006年11月20日)らのザ・ヴァーブス(2006年12月22日)。前座があったので、結構見れるかなと思っていたのだが、半分ぐらい終わっていたな。スティーヴ・ジョーダン(ドラム)、ミーガン・ボス(ヴォーカル、ギター)、奥田民生(ギター、ヴォーカル)、ピノ・パラディーノ(2008年11月17日)という面々が並ぶ。
そのステージ上は家のリヴィング・ルームを模したように、電気スタンドやソファー等が置かれている。今回4人を取材したときに、本当に仲のいいバンドと言う感じがあって、なるほどなァと思ったが、このステージ美術設定はそうしたノリ、日常の横にある音楽という感じを増幅させている。その第2作は『トリップ』というが、ステージ背景にはスティーヴ達が世界各国(日本も含む)で撮った映像が映し出される。
今回から、奥田民生はメンバーになったそう。マルチ・プレイヤーでもある彼は一公演で一曲、一人でどんどん音を重ねていき曲を完成させるプロセスを全て公に披露する<ひとりカンタビレ>というツアーをやった(『OTRL』というアルバムに結実)が、そんな酔狂な事をやる彼には拍手(ちょい、見たかった)。で、その後にNYに飛んでザ・ヴァーブスのレコーディングをやり(ついでにザ・ヴァーブスのリズム隊が入ったジョン・メイヤー・トリオのシカゴ公演を見たりもしたよう)、戻ってきて石川さゆり(2009年6月10日)とのコラボ曲を録り、今は全国6公演のザ・ヴァーブス公演にのぞんでいる。あ、ユニコーンでフェスにも出ているか。自ら今年は忙しいと言っていたが、ほんと“働く男”だ。
後半にさしかかるところで、ミーガンは一時引っ込み、ギター演奏に専念していた奥田はトリオで自分の曲を3曲やる。それ、ジョン・メイヤー・トリオから主役のジョン・メイヤーを抜いて新たに奥田を中央に据えた、と説明できる? スティーヴはバック・コーラスもうれしそうに取る。ユニコーン時代の「ターボ意味無し」は久しぶりにやるそうで、それはジョーダンのリクエストだそう。
白い歯を見せっぱなしで叩く、ジョーダンのドラム・キットのシンプルさにはびっくり。そんなに口径の大きくないキック・ドラム、スネア、ハイハット(かなり高い位置に置かれ、それはマイクで音を拾い易そう)、シンバル1枚、タム二つといった感じだもの。だが、その演奏/音色はマジ絶品。気持ちよくも、浸れるう〜。しかも、ときに手足のコンビネーションの巧みな独特さから、ツイン・ドラムに聞こえる時もあるのだから、これは凄い。大げさなドラム・キットを使っている人がおおいに不毛に思えたのは確か。やっぱり、彼はスーパー・ドラマーだ。
今回の公演はカヴァー曲もいろいろやり、娯楽性や親しみ易さをより求めんとする意図が出ていたのは間違いない。ザ・ヴァーブス曲以外でやったのは、エリック・クラプトン(「イージー・ナウ」)、ロキシー・ミュージック(「ラヴ・イズ・ザ・ドラッグ」)、グラム・パーソンズ(「ヒッコリー・ウィンド」)、バッド・フィンガー(「ベイビー・ブルー」)、ニーナ・シモン(アニマルズで知られる、「悲しき願い」)、カール・パーキンス(「グラッド・オール・オーヴァー」)。
なお、グラム・パーソンズ曲は、亡くなったソロモン・バーク(2010年5月29日、他)のヴァージョンでお送りすると言ったっけ? バークはこの10月10日、公演のためにLAからアムステルダムに向かう飛行機にのったが、その機内で天に召された(自然死、と発表されたよう)。ジョーダンはバークの08年作『ライク・ア・ファイアー』をプロデュースしていますね。そこで、曲を提供しギターも弾いていたのがジェシー・ハリス(2010年10月10日、他)で、ザ・ヴァーブスの新作にはジャクソン・ブラウン(2003年5月2日)やブルース・スプリングスティーン夫妻とともに、彼の名前も感謝の項にクレジットされている。
とても良質なバンド・サウンドに支えられた、大人の意欲と洒脱と歓びがあふれた、素敵なヴァイブあふれるポップ・ロック・ショウ。もちろん、前回時の味を大きく上回る。
ステージ上には17人。管奏者は、トランペット4人、トロンボーン4人、サックス5人。リズム隊のアンソニー・ジャクソンとクリフ・アーモンドは矢野顕子(2009年12月13日、他)が起用していた人たち(2004年7月20日)でもあり、さらに打楽器奏者が一人。奏者は皆NY在住だろうが、その打楽器奏者のアキーノさんは幼なじみとMCで紹介されていたので、ドミニカ人だろうか。彼とはデュオでやったりとか、何気にフィーチャーされていたな。実のところ、ぼくはカミロがビッグ・バンド表現もやる人であるのを知らなかったが、今回の顔ぶれとリズム隊や主要ソリストが少し重なりもする94年本国ドミニカ録音ビッグ・バンド作のCD+DVD商品が来日に合わせてソニーからリリースされたりもしたので、そうとう昔からビッグ・バンド表現にも目が向いていたのは間違いない。その作品で全ての作編曲クレジットは全てカミロになっていたが、この晩の演目はどうだったのだろう。
ハレの場での、娯楽の表現。そんなビッグ・バンド表現の特性をしかと踏まえた上で絢爛重厚なパフォーマンスは繰り広げるわけだが、満員の観客から相当に熱い反応を受けて、カミロもバンド構成員も本当にうれしそう。やはり、ビッグ・バンド・ジャズには、普通のコンボによるジャズ演奏とは別の機微がある。アンサンブル部のとき、カミロはピアノを離れて、指揮をやったりもした。ラテン的な曲は半分ぐらいはあったかしら。終盤の曲では管奏者たちがお客さんにクラーヴェの手拍子を促したりもし、会場はより華やいだ雰囲気でいっぱいになった。
そして、演奏が終わったとたん飛び出して、タクシーに飛び乗り、渋谷・アックスに。米国ポップ音楽界大フィクサー、スティーヴ・ジョーダン(2005年11月13日、2006年11月20日)らのザ・ヴァーブス(2006年12月22日)。前座があったので、結構見れるかなと思っていたのだが、半分ぐらい終わっていたな。スティーヴ・ジョーダン(ドラム)、ミーガン・ボス(ヴォーカル、ギター)、奥田民生(ギター、ヴォーカル)、ピノ・パラディーノ(2008年11月17日)という面々が並ぶ。
そのステージ上は家のリヴィング・ルームを模したように、電気スタンドやソファー等が置かれている。今回4人を取材したときに、本当に仲のいいバンドと言う感じがあって、なるほどなァと思ったが、このステージ美術設定はそうしたノリ、日常の横にある音楽という感じを増幅させている。その第2作は『トリップ』というが、ステージ背景にはスティーヴ達が世界各国(日本も含む)で撮った映像が映し出される。
今回から、奥田民生はメンバーになったそう。マルチ・プレイヤーでもある彼は一公演で一曲、一人でどんどん音を重ねていき曲を完成させるプロセスを全て公に披露する<ひとりカンタビレ>というツアーをやった(『OTRL』というアルバムに結実)が、そんな酔狂な事をやる彼には拍手(ちょい、見たかった)。で、その後にNYに飛んでザ・ヴァーブスのレコーディングをやり(ついでにザ・ヴァーブスのリズム隊が入ったジョン・メイヤー・トリオのシカゴ公演を見たりもしたよう)、戻ってきて石川さゆり(2009年6月10日)とのコラボ曲を録り、今は全国6公演のザ・ヴァーブス公演にのぞんでいる。あ、ユニコーンでフェスにも出ているか。自ら今年は忙しいと言っていたが、ほんと“働く男”だ。
後半にさしかかるところで、ミーガンは一時引っ込み、ギター演奏に専念していた奥田はトリオで自分の曲を3曲やる。それ、ジョン・メイヤー・トリオから主役のジョン・メイヤーを抜いて新たに奥田を中央に据えた、と説明できる? スティーヴはバック・コーラスもうれしそうに取る。ユニコーン時代の「ターボ意味無し」は久しぶりにやるそうで、それはジョーダンのリクエストだそう。
白い歯を見せっぱなしで叩く、ジョーダンのドラム・キットのシンプルさにはびっくり。そんなに口径の大きくないキック・ドラム、スネア、ハイハット(かなり高い位置に置かれ、それはマイクで音を拾い易そう)、シンバル1枚、タム二つといった感じだもの。だが、その演奏/音色はマジ絶品。気持ちよくも、浸れるう〜。しかも、ときに手足のコンビネーションの巧みな独特さから、ツイン・ドラムに聞こえる時もあるのだから、これは凄い。大げさなドラム・キットを使っている人がおおいに不毛に思えたのは確か。やっぱり、彼はスーパー・ドラマーだ。
今回の公演はカヴァー曲もいろいろやり、娯楽性や親しみ易さをより求めんとする意図が出ていたのは間違いない。ザ・ヴァーブス曲以外でやったのは、エリック・クラプトン(「イージー・ナウ」)、ロキシー・ミュージック(「ラヴ・イズ・ザ・ドラッグ」)、グラム・パーソンズ(「ヒッコリー・ウィンド」)、バッド・フィンガー(「ベイビー・ブルー」)、ニーナ・シモン(アニマルズで知られる、「悲しき願い」)、カール・パーキンス(「グラッド・オール・オーヴァー」)。
なお、グラム・パーソンズ曲は、亡くなったソロモン・バーク(2010年5月29日、他)のヴァージョンでお送りすると言ったっけ? バークはこの10月10日、公演のためにLAからアムステルダムに向かう飛行機にのったが、その機内で天に召された(自然死、と発表されたよう)。ジョーダンはバークの08年作『ライク・ア・ファイアー』をプロデュースしていますね。そこで、曲を提供しギターも弾いていたのがジェシー・ハリス(2010年10月10日、他)で、ザ・ヴァーブスの新作にはジャクソン・ブラウン(2003年5月2日)やブルース・スプリングスティーン夫妻とともに、彼の名前も感謝の項にクレジットされている。
とても良質なバンド・サウンドに支えられた、大人の意欲と洒脱と歓びがあふれた、素敵なヴァイブあふれるポップ・ロック・ショウ。もちろん、前回時の味を大きく上回る。
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