出てきたとたん、この人にはかなわないと、なんか皮膚感覚で痛感しちゃったナ。

 アルゼンチンのシンガー・ソングライター、と、書いてしまっていいのかな。だって、そういう一般的な言葉で括っちゃうのが申し訳ない、我が道を行くノリや世界観をあっさり出しているから。打楽器(時にエフェクターをかます)を叩きながら歌う……と、書くと、なんともアレだが、それで、アルゼンチンの伝統と翔んでる先鋭感覚をメビウスの環の上で同居させたような、澄んだ肉体的表現をずばり送り出してしまう人。言葉を超えた、驚異のヴァイブあり。それは聞く者の息を飲ませたり、別の所に連れて行ったり。そんな彼女は、ときにはチャランゴを弾きながら歌ったりもした。また、一部は日本在住だろうアルゼンチン人アーティストが二人、それぞれギターで重なる(うち、一人はアリエル・アッセルボーン)。

 彼女はほぼ完璧な発音で、「上を向いて歩こう」をフルで歌ったりもした。なんでも、彼女はこの歌をアフリカで教わったらしい。←おお、一番インターナショナルな、日本のポップ曲。また、曲間でも、彼女はこれが私の呼吸の仕方なのと言うかのように、淡いメロディを口ずさんでいたりも。その風情が良い。とかなんとか、いろんな意味で規格外であり、なんかすげえ自分の領域を持っている音楽のムシなり。アルゼンチン、やっぱすごいよー(10月中旬には、これまた注目のカルロス・アギーレの初来日公演がある)。ここからそんなに遠くない某所で早起きのニューヨーカーに電話インタヴューしなきゃいけなくて、本編のみで退出しなければならなかったのは残念。アンコールはどんな世界が展開されたのか。南青山・マンダラ。

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