前に来日したとき(2007年11月21日)、あまりの生理的ヘヴィネスと闊達さでぼくが降参したルバルカバのクインテットがまた来日した。前回時はすでに同じ設定による『アヴァター』を録音済みで、新作を引っさげてのもの(と、言いつつ、世界的に発表前であったが。来日時にインタヴューしたら、録音後のツアーで一段と集団表現に磨きがかかってきて、本当はツアーが一段落してから新作を撮りたかったアということも言っていた)だったが、ルバルカバはあれ以来、ずっと在籍しているブルーノートからアルバムをリリースしていない。

 今回のクインテットはピアノの当人に加え、ヨスバニー・テリー(アルト・サックス、ソプラノ・サックス、鳴りもの)、アヴィシャイ・コーエン(トランペット)、ジュニオール・テリー(ベース)、マーカス・ギルモア(ドラム)という顔ぶれ。前回のクインテットとは、トランぺッターとベーシストが変わっている。トランペット奏者はもちろん同姓同名のベーシスト(2006年5月17日)とは異人(でも、ともにイスラエル出身)で、ヨスバニ・テリーとは仲良しで、お互いのリーダー作に入り合っている。物凄く真摯で力量を必要とされるジャズということは前回と共通するものの、今回のクインテット演奏はまた別のところを向いていたところはあったんではないかな。

 アブストラクトさ/いい意味での難解さは今回も持つものの、ストレートさというかエネルギッシュさでは前回の方が上。ただし、前回はいわゆる新主流派(60年代に出てきた、フリー・ジャズ的局面も見た、覇気一杯のブラック・ジャズ)ノリを直裁になぞるところがあったものの、今回はもっと含みや微妙な集団構成美学が徹底されたものになっていて(ビートもより純粋な4ビートから離れようとする意思は強まっていた。なお、蛇足ながら、ラテン濃度はほぼゼロ)、ぼくはうっすら発汗しつつ、頭をたれた。曲のイントロなんかでの、ルバルカバのソロの指さばきは、粒立ちつつ綺麗。なるほど、1日だけソロでピアノを弾く日も設定されているが、聞きたいかもとちょい思う。←ライヴ三昧をずっと読んでいる人なら知っている人もいるかもしれないが、ずっとぼくはルバルカバを嫌い、評価していなかった。

 以上、丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。そして、南青山・ブルーノート東京に移動し、現在はLAに住むネオ・ソウル系実力派シンガーを見る。

 99年アルバム・デビューし、今年で40歳。あれれ、ぼくが良いわあと感激した前回公演(2005年11月25日)よりか、若く見えるし、何より痩せた。実力者ながら不遇をかこっていた感じもあったが、昨年にコンコード/スタックスとディールを持ったことと、それは関係あるか。でもって、ヘアスタイルは超ヤンキー調、と言いたくなるもの。バックは女性コーラス、キーボード、ベース、ドラム。みんな、20代かな。コーラスと鍵盤は相当なビッグ・ママ体系かつ姓が同じなので姉妹かもしれぬ。

 前回ほどの感激は覚えなかったが、触れてうれしいショウ。バック・コーラスのサラ・ウィリアムズは相当な実両者。純粋な歌のうまさだったら、エンダビより上と感じた。けっこうキャリアを重ねているはずのエンダビだが、なぜかMCの挟み方が下手。まあ、初々しいとも言えるかもしれないが。なお、彼女のショウは通常とちがい、1日1ショウ。そのため、会場はもうフルハウス。でもって、フルの長さのショウをやったはず。

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