ステージ上に表れた当人は長身痩身で、上品な顔つき白髪のちょい紳士。還暦、ぐらいかな。まあ、あの感じでちゃんと仕立てのいいスーツを着ていたとしたら、英国のエグゼクテイヴなんですよと言われても信じそう。そんな彼はアコースティック・ギターを手に、一人で90分強のパフォーマンスをこなす。60年代後期から約10年間はヴァン・ダー・グラアフ・ジェネレイターという、サイケ感覚や鼻につかない気取りを内に抱えていたプログ・ロック・バンドの中心人物としてぶいぶい言わせていたわけだが、今は悠々とソロのパフォーマンス活動をやっているらしい。で、その際、実演はギターとピアノを気まま持ち替えながら進められるということだが、この晩はギター弾き語りに特化したショウをやっちゃいますという位置づけ。翌日からの3日間はちゃんとしたピアノがおいてあるはずの新宿・ピットインでの公演なので、差別化をはかったか。客には、外国人も散見。

 ときに、吞気にビーンビーンビーンとチューニングを変えたりもし、彼はオープン・チューニングも用いる。淡々というよりは朗々、ときにはけっこう青筋立てて歌ったりして、いろんなヴァリエーションを持つ、芯と気のある弾き語り表現を連ねていく。その様に触れてて感じたのは、なんかザ・フー(2008年11月17日)のピート・タウンゼントのソロ表現の味と重なるところがある、ということ。同様の感想を、日本きってのザ・フー愛好家も漏らしておりました。かつてのバンド時代の曲をやったのかとかは熱心な聞き手ではないぼくに判るはずもないが、歩んできた我が道に悔い無しといった感じの澄んだ気持ちに満ちていたパフォーマンスは“香り高い”と書きたくなる妙味を持っていた。南青山・月見ル君想フ。

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