松田美緒

2010年4月19日 音楽
 ポルトガル語圏音楽が持つ揺らぎやしなやかさを自在のスケール感のもと自分のヴォーカル・ミュージックとして送り出している女性シンガー(2005年7月11日)、青山・プラッサオンゼ。セカンド・ショウから見る。ショーロ・クラブ(2002年3月24日)の澤田穣治(ウッド・ベース)と阿部篤志(キーボード)をサポート奏者に迎えてのもので、3人流でトム・ジョビン曲を紐解くというユニットのよう。実は、サポートのお二人はかなり我のある演奏をする人たち、でもだからこそ私は自分を投げ出せるという感じで、自在に彼女は肉声を舞わせていく。そんなわけだから、材料はボサノヴァの巨匠曲だが、ここで繰り広げれられるものは一般のボサノヴァからは離れたものになっていた。それも、また興味深し。

 この晩がこのユニットでの初ライヴのようだったが、まだ当人たちも今後どう動いて行くのか不明の部分があり、その揺れ具合が“生の場”の出し物としての意義につながっていた、とも書けるか。(このユニットでは)コンサートごとにいつでも違う曲をやりたいといったようなことを松田はMCで言っていたが、決まったことを排して、音楽を育んでいきたいという気持ちは正しい。ジョビン曲って一杯あるだろうし。

 とことろで、先週からのアイスランドの火山噴火で欧州の空路が閉じていて、複数のメールに“still stuck”という単語を認め、すっかり頭のなかがフィッシュボーン祭りになっている。←彼らは06年に『スティル・スタック・イン・ユア・スロート』というアルバムを出しているのダ。単純な、オレ。足止めをくらっている知人も何人かいるみたいだし、逆に帰れなくなった英国人をとめてあげたりしている知り合いもいる。今、出演者(オランダ人歌手のトレンチャ)が来日できずにブルーノート東京の営業は止まっているようだが、これが夏のサマーフェスのシーズンだったらとんでもないことになるだろうな。

 ぼくが万が一、こういうアクシデントに見舞われたら……けっこう楽しんじゃおうとするかな。だって、帰れなくて仕事をとばしてもこういう状況なら間違いなくみんな許容せざるをえないはずで、開き直ってエクストラ滞在を楽しんでしまうはず。まあ、ちゃんと宿泊場所が確保できているのが前提だが。ぼくは海外でトラブったことは皆無で、飛行機の大幅な時間遅延もない(あ、2000年8月11日に書いていることぐらいかな)。過去、ぼくは仕事したくないから海外にPCを持って出たことはない(メールなんて、ホテルのビジネス・センターや街のネット・カフェでいくらでもチェックできるし)、でもこんなことが起きた時のストレスなしの連絡や情報を容易に取れるようにするためには、考え方を改めておいたほうがいいのかもしれないナ。

追記)わあ、さすが百戦錬磨の、田村夏樹/藤井郷子夫妻(2010年1月9日、他)。二人はちょうど英国をまわっているときに空路閉鎖にあったが、臨機応変に電車にかえてスコットランドからブリストルに移ってギグをし、フランスにもちゃんと渡りリールでの最後のライヴをやり、見事に正しい選択のもとミュンヘン空港が開いてすぐの便で帰国。そのまま、二人は間に合わなかったma-doのツアーの初日だけをキャセルしただけで、元気に日本を回るようだ。その感動的な手際のよさは、二人のHPのツアー・ブログにくわしい。リアル・ジャズの人はほんと強い!

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