新宿ピットイン。梅津和時(2009年6月5日、他)を主役に置く出し物が日替わりにて、1週間の帯で開かれるなかの一つ。この晩に披露されたのは昨年の彼の還暦イヴェントをやる際に生まれた単位だそうで、出演者は梅津(sax)に加え、多田葉子(sax。2009年7月29日、他)、鬼怒無月(g。2009年10月8日、他)、清水一登(p,key)、高橋香織(vl)、早川岳晴(bass。2009年6月5日、他)、夏秋文尚(ds)、仙波清彦(per)。

 この出し物のポイントは、70年代後期に彼が率いていたサン・ラー・アーケストラ(2002年9月7日、他)影響下にあった生活向上委員会を筆頭に、ドクトル梅津バンドやシャクシャイン他で披露済みの古めの彼のオリジナル曲をもう一度今の視点/この顔ぶれで広げてみよう、というもののよう。ビートはどれも非4ビート(スカ調もアリ)で、けっこうエスノぽかったりするときも。ドクトル梅津バンド時代のパンク・ジャズ調曲は発汗。好きだったんだよなー。とかなんとか、秀でたリード奏者/ソリストであった梅津は当初からメロディや曲の酔狂な意匠にも自覚的であったということをそれは示すかな。そんな彼の才や持ち味をアピールしようとするものにも関わらず、エゴをまるで感じさせないのは人徳だろうか。

 1部の終わりでは、名前の紹介とともに出演者が一人一人去って行く。そして、梅津と多田と早川だけとなったとき、二管はハッピー・バースデイのフレイズを突然吹き出し、ロウソク付きケーキとともに引っ込んだメンバーがまた出て来て、前日が誕生日である早川(56歳だという。さすがサイクリスト、身体はスリムだなあ)をサプライズ的に祝う。他愛ないけど、そーゆーのいいナ。また、アンコール曲もうれし。なんと披露したのは、ザ・ビートルズの「ホエン・アイ・ワズ・64」。その際、清水はベース・クラリネットを手にしたが、面々はいい感じにヤレたボードヴィル調にて演奏。そして、梅津は途中から愛らしくも正々堂々と、日本語の歌詞をつけた(じじいにはじじいのうれしい生き方がちゃんとある、といったような内容のもの)歌をうたう。仲良しだった忌野清志郎(2005年7月29日、他)のカヴァー曲に繋がるようなそれ、最高でした。

 実は、ピットインに向かうときに、マフラーを落とす(この日は温かくて、途中から外してポケットにいれていたのだが)。ぼくが持っているマフラーのなかで一番高価なもので、エエン。おまけに、何度も行っているくせに、新宿三丁目駅の出口を間違えたら、なぜか道を失う。歳をとって、方向感覚が悪くなっているのはまちがいないなあ。ぐすん。だからこそ、梅津版「ホエン・アイ・ワズ・64」を余計にいいと思えたのか。で、帰りに副都心線の渋谷駅についたとき、降りたホームにちょうど駅員がいたので、なんとなく駄目もとで「落とし物はどこで確認できますか」と問う。そしたら、駅員は「どういうものですか」とかいろいろ聞いて、それが届いていないか手際良く無線で調べてくれ、「該当しそうなものが、届いてます」と教えてくれる。うわあ、すげえ親切でプロフェッショナル。助役代理という肩書きがネームプレイトに付いていたような気がしたが、そんなに歳はいっていない長身痩身の人。ぼくは、あなたの対応にいたく感激しました。

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