六本木・ビルボードライブ東京(セカンド・ショウ)。ピンク・マティーニはオレゴン州ポートランドをベースとする洒脱&酔狂集団。その求めるところは、憩いある広義のラウンジ・ミュージック/野卑にならないキャバレー・ミュージックを提供しよう……。だからこそ、彼らはスウィンギンなジャズ調曲、ラテンやブラジル調曲、シャンソン曲、そして果ては日本の歌謡曲までを涼しい顔して取り上げてしまう。そして、その先にはしなやかな音楽観や生活観が広がっており、アメリカにも変テコな愛い奴らがいるじゃんと思わせられるわけだ。かなり洒落のめした、外しのグループと言えるわけで、日本だとダブル・フェイマスとかASA-CHANG&ブルーハッツなんかは少しは近い? ただ、ピンク・マティーニはみんな中年以上なので少し落ち着いているところはあるか。とともに、中心人物のピアニスト(オフは、日本の赤いランドセルをしょっている)と女性歌手(母親はアフリカン・アメリカンで父親はアイリッシュとどこか、と言っていたな)はハーバード大出だそうで、いろんな言語で歌う部分をはじめ、どこかに知性のありかを透けさせているところはあるかも。90年代中期から活動している人たちだが、演奏は過剰には上手くないので、当初はほんと密かな愉しみ的なノリでスタートしたのかもしれない。

 ステージ上には、12人。ピアノ/MC(一生懸命、たどたどしい日本語を連発)、女性ヴォーカル、サブの男性ヴォーカル、トランペット、トロンボーン、ヴァイオリン、チェロ、ギター、ウッド・ベース、ドラム、パーカッション2。もちろん、みな正装。さらに、途中にマヒナスターズの曲「菊千代と申します」をやるときは琴奏者も出てきて、大正琴のような演奏を聞かせる。やはり、日本語の曲はウケる。その際、シンガー陣は綺麗な日本語発音で歌う。格好いい男性シンガーは日本姓を持つ美声の持ち主で、ジェロと絡んでほしいと思った? 終盤に再び日本語曲の「タ・ヤ・タン」。そしたら、横からオリジナル・シンガーの由紀さおりが出てきて、一緒に歌う←さすがの歌い口、物腰。そりゃあ、湧きます。ぼくはともにそれらの日本語曲をピンク・マティーニの前に聞いたことはなかったが、原典を知っている人だと、また別の感慨があるかも。

 ところで、ポートランドというと、インディ系のロック・バンドがいろいろ出ていてちゃんとした音楽シーンを持つ街という印象を持つ(ヘルメットにいたペイジ・ハミルトンもそこの出身だよな)が、レコード市場も充実しているよう。なんでも、マヒナスターズや由紀さおりの曲は同地の中古盤屋で買って、知ったのだとか。ほお。なお、彼らのマネイジメントはノラ・ジョーンズ(2010年1月21日、他)とかメロディ・ガルドー(2009年9月5日、他)とかダイアナ・クラール(1999年5月21日)とかが所属する事務所。彼らはインディからアルバムを出しているが、けっこうツアーもやっているようであり、日本盤も出た最新作『草原の輝き』はそこそこ米国総合チャートでも健闘した(客は外国人も少なくなかった)のは、そのご利益もあるのだろう。初来日だと思っていたら、彼らのことを企業絡みの公演でかつて見た(アストロ・ホール)という人がいましたが。

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