フィッシュボーン(2007年4月6日、他)は実存する人たちのなかで唯一絶対服従のバンド。常日頃からそう言って憚らない私ですが、やはりそれは正しい、と思ってしまったかな。

 そのフロント・マンのアンジェロ・クリストファー・ムーアがひょっこり来日中、各所で日本在住のミュージシャンたちと重なり、ボエトリー・リーディング主体のパフォーマンスを鋭意やっている。ドクター・マッド・ヴァイブという名前は自分の言葉を中央においたソロとしての活動を行うときに用いる名前で、その名を冠したソロ・アルバムを彼は3枚(たぶん)出している。とくに、05年発表のホーン音が百花繚乱しいろんな肉声とぶつかったり溶けたりする『Dr. Madd Vibe’s Medicine Cabinet』(Mooremapp)は超音楽的でもあり、オルタナティヴ・ラップの大傑作とぼくは信じる。

 横浜・グラスルーツ。まず犬式のフロントマン、三宅洋平が特徴的な声でリーディング。犬式の歌詞にもサッカーねたが出てきたりもするが、すごいサッカー好きなんだな。彼が30分ぐらいやったあと、その設定を引き継ぐようにアンジェロ(例によって、ちゃんと気を使った格好なり)のギグが始まる。ハンサムな在日米国人電気ベーシストや日本人電気パッド奏者を従え、本人はサックスやテルミンを操りつつ、フリー・スタイルで存在感のある肉声を投げ出して行く。途中からは、けっこう歌う感じもあったりし、あのフィッシュボーンのアンジェロという手応えがごんごん押し寄せてくる。生々しくも、怒濤。うーん、やっぱりこの言葉にならないうれしい感覚はアンジェロでしかありえないという思いとともに、感激がもあもあもあもあ〜。アンジェロと協調者との関係もかなり有機的なものであったはずで、それには少し驚く。

 会場は小振りな店なこともあり、とうぜんフル・ハウス。けっこう若い人や女性が多かった。会場では、『Dr. Madd Vibe’s Medicine Cabinet』のジャケット絵も描いているシンパの日本人アーティストとコラヴォレイトしたTシャツ(1500円。安いっ)やコミックとCD(2曲入り。傑作)のセットを販売していたりも。今回は詩集は販売していなかった。

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