PE’Z

2009年10月29日 音楽
 へえ、こんな個性的なジャズのやり方もあるんだ。東洋の小僧たち、やるじゃないか。……PE’Zのステージの袖にはにやにや興味深げにその演奏をチェックする外国人ミュージシャンがずらりと並ぶ。それ、02年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァル・イン斑尾(2002年8月2日〜4日)での一コマ。ハード・バップ黄金期のジャズが抱えていた様式や風情を受け継ぎつつ、颯爽とポップなメロディや今っぽい立ちを持つ曲を演奏しているPE’Zを見ていた米国人ミュージシャンのなかにはソウライヴ(2009年7月8日、他)の面々もいて、彼らはPE’Z(2007年4月14日、2006年10月24日、他)結成10周年を祝うトリビュート・アルバムにPE’Zカヴァー曲を提供している。

 六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・セット。節目に際しての、アコースティック編成によるクラブ・ツアーのなかの一つ。アコースティック編成とはいえ、もともとウッド・ベースを用いる彼らゆえ(ベースの音色は電気ブーストをかけすぎではと今回感じた)、普段は電気キーボードを弾くヒイズミ(2008年4月6日)がグランド・プアノを扱うのが大きな違いだが。で、おなじみの曲(けっこう、変えられているものも)から、ハービー・ハンコック(2005年8月23日、他)の「ウォーターメロン・マン」のカヴァー、来年に出る新作に入る予定の曲まで、おもうままに演奏する。リーダーの大山はとても心のこもったMCをまっすぐにするのだな。というのはともかく、今回印象に残ったのは、彼のトランペット・ソロ。昔はダラダラとソロを入れたくないと言っていたこともある彼であり、そんなにソロイストとして見た事はなかったけど、今回触れてしっかり歌心のある確かなソロをとる人なんだと認知。その、ステージでの彼のファッションはいまだによく分からないが。過去も手にしているのかもれないが、フリューゲルホーンとソプラノ・サックスに二人の管奏者(2009年7月27日)が持ち換えた曲もあった。

 約1時間15分の演奏。この日も定時に出てきて疾走し、アンコールなしでさくっと終わる。表現にしても、態度にしても、きっちりと自分たちの流儀を持つバンドだな。そして、それを支えるのは常道を嫌うまっとうな反骨精神であり、独自性を酔狂なまでに追い求めるようとする澄んだ気持ちだ。そういえば、かつて取材したときに、大山は自分がやりたい事を具現するためのに自分の我を通しまくり、ヒトラーだったか独裁者だったかは忘れたが、初期にはそう周りから呼ばれていたと言っていたことがあった。不動の顔ぶれでの10年、それは大山のリーダーシップに支えられた10年でもあったのかな。最初期、彼らは知り合いのバーの営業時間外に店に楽器を持ち込んで表現を固めていったそう。そのバーはビルボードライブ東京の近くにあったという。

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