祭日の昼下がりにのんびりしていたら、知人から電話あり。で、唐突に、川崎市の東扇島でやっている京浜ロックフェスティバル’09(昨年は、京浜音楽祭という名前だった)にさくっと行っちゃう。家を出たのは2時50分だったが、高速がすいていて3時半スタートの細野晴臣のステージに余裕で間に合う。チャップリンの「スマイル」でスタートしたそのショウは、くつろぎのカヴァーがいろいろ。ザ・バンドの2曲のときは、日本語詞にて。「ザ・ナイト・ゼイ・ドローヴ・オールド・ディキシー・ダウン」のリフレインを一緒に歌えてうれしかった。途中から、久保田麻琴(このフェスの総合プロデューサーでもある)も加わる。

 会場は埋め立て地にある公園内の雑草が生えた空き地のようなところ。そこに、年齢層高めのお客さんたちが気ままに座っている。晴天で、ほんと何より。ステージはトレーラーの荷台を用いた小振りなものが二つ、トイレは公園のものをそのまま使用といった感じで、とっても省エネ志向。続いて、憂歌団をやっていた内田勘太郎(2002年12月15日)が女性クラリネット奏者を伴って登場。ずうっと沖縄に住んでいるそうで、ジャジーなものから沖縄の歌までなんかのんびりした情感あふれる手作り表現を展開する。その次はオレンジ・カウンティ・ブラザース。かなりのキャリアを持つバンドで名前は昔から知っていたが、ちゃんと触れるのは今回が初めてか。年季の入った、テックス・メックス味もうれしいルーツィなロックを聞かせる。MCは、越路姉妹(2006年3月6日、他)の二人の看板娘(?)がやっていてびっくり。そして、東京に帰り、車を戻す。

 その後は、青山・プラッサオンゼ。グラストン・ガリッツァとヤヒロトモヒロ(2007年11月14日、2009年2月8日)のデュオ公演を見る。ガリッツァはブラジルのミナスジェライス出身(1967年生まれ)、現在はスペインのマドリッドを拠点に活動しているシンガー・ソングライター。なんでブラジル人はどうしてこうも……と一聴しただけで痛感せずにはいられない、目映くも柔和な滋味をたっぷり受ける。ギター演奏といい、メロディといい、歌声といい。そして、そんな彼に寄り添い、芯や広がりや色彩感を的確に付ける、いろんなヤヒロの打楽器音も素晴らしい。昨年も一緒に日本ツアーをやったそうだが、二人の間にある信頼関係もいい感じだ。

 実は、ガリッツァは盲目の音楽家。ながら、日本には単身で来ているそうで、そういう強さと裏返しのフットワークの軽さも魅力に跳ね返っている部分はあるか。彼がスペインに渡ったのは、本国であるコンテストに出たらレニーニ(2000年6月16日)が1位で彼は2位、そしてレニーニにはかなわないと痛感し、外の地で勝負することを選んだ結果なのだとか。←これ、彼に話を聞いた中原仁さん情報です。ともあれ、そういう開かれた意思も彼のしなやかさ(MCは英語でしていた)にはつながっているはず。そして、盲目という事で、先日のラウル・ミドン(2009年10月8日)との比較もしてしまう(けっこう、持つ雰囲気は似ているかも。年齢はミドンが1歳上)が、ガリッツァが劣っているところはないんじゃないか。彼はもしかするとスティーヴィー・ワンダーも好きかもしれないと思わせる秀でたポップ性も持っているわけだし、軽やかさのなかから得難い慈しみの情も出せる。どこか、力のあるレコード会社なりプロダクションが一度彼の大々的な売り出しに関わることはかなわないか。それと引き換えに捨てなきゃならないものも出てくるかもしれない。だが、彼のしなやかさと強さは、そうしたマイナス面も触媒にし、自分を出す事ができると思う。

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