ザ・ラムゼイ・ルイス・トリオ
2009年8月29日 音楽 ジョン・ルイス(1920年〜2000年)というジャズ・ピアニストがいた。モダン・ジャズの行き方とクラシック音楽要素を融合させたオルタナティヴな室内楽的ジャズ表現で多大な人気を博したザ・モダン・ジャズ・カルテット(MJQ。50年代初頭から20年強続けられた。後に、少し再結成されたりも)のリーダーだった人物である。ある意味“白い”方向性も持っていたMJQだったが、彼はそれを全員アフリカン・アメリカンでやること(特に、もう一人の看板奏者であったミルト・ジャクソンは根っからソウルフルなヴァイブラフォン奏者であった)に意味を見いだしていたように思う。MJQの瑞々しい表現を聞いていると、<白んぼよ、黒人の事を粗雑で野卑な事しかできないと思ってるんじゃねえぜ。確かに我々はソウルフルだ。だが、そうでありつつ、一方で我々は精緻で肌触りが良い洗練の極みのような表現もきっちり作れるんだよ。ほらMJQで優しく提示してあげるから、我々アフリカン・アメリカンの創造性や飛躍力を味わい、その凄さを痛感するがいい>という、クールにして突っ張った意思表示をぼくは感じずにはいられない。そんな彼だからこそ、ぷっつんブラック・ジャズ大王たるオーネット・コールマン(2006年3月27日)を初期に認め、ルイスは自分が所属するアトランティックに彼の事を紹介し、コールマンが広く知られるきっかけを与えるのだ。研ぎすまされた感覚と強いプライドと物事の正解は一つだけではないというしなやかさ、それらを無理なく持つ賢人ルイス(今なら、ぼくはMJQ作よりもソロ作のほうを先に勧めたい)はセロニアス・モンクと比肩するぐらい、彼とはまったく別のやり方で最高にイケてる米国黒人の美意識や優位性を出したレジェンドであったと思う。
なんか、ラムゼイ・ルイス(2008年7月2日)の何でもありのピアノ・トリオ表現を聞きなら、唐突にぼくはジョン・ルイスの真価を思い出していたのだ……。大ヒット(65年総合5位。R&B2位。そこでドラムを叩いていたのはまだジャズ・マンだったEW&Fのモウリス・ホワイト)した「ジ・イン・クラウド」に代表される彼一番のトレイドマークのファンキー・ジャズ路線から、気取ったクラシック調路線まで。教会に根ざしたゴスペル感覚が入ったものもやれば、端正でおとなしい4ビート曲もやるし、EW&Fの「サン・ゴッテス」の屈託のないカヴァー(それも、75年にルイスはシングル・ヒットさせている)もやる。それらはどれも50 年を超えるこれまでの長いレコーディング・キャリアにおいてやっていることで、その広いネタを素直に括って出しただけと言う事も可能なのだが、やはりラムゼイ・ルイスを腰軽くいろんなことに向かわせたのは米国白人社会の差別や偏見ではなかったのか。今の彼は指が動かなくなってきていて、もどかしさを感じさせるときもある。だが、綺麗な身なりとともにエスタブリッシュされ感がばりばりの彼の円満な風情/ステージ・マナーに触れていると、それはシカゴから白い壁の向こう側に飛び出そうとしたルイス(35年生まれ)の輝かしい人生勝利宣言のように思えてきてしまったりもするのだ。あの笑顔の奥にあるいろいろな襞の存在、オールマイティなものを求める心の奥の陰影……。そんなもろもろに触れられて、否定的な気持ちになるはずがないではないか。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。
なんか、ラムゼイ・ルイス(2008年7月2日)の何でもありのピアノ・トリオ表現を聞きなら、唐突にぼくはジョン・ルイスの真価を思い出していたのだ……。大ヒット(65年総合5位。R&B2位。そこでドラムを叩いていたのはまだジャズ・マンだったEW&Fのモウリス・ホワイト)した「ジ・イン・クラウド」に代表される彼一番のトレイドマークのファンキー・ジャズ路線から、気取ったクラシック調路線まで。教会に根ざしたゴスペル感覚が入ったものもやれば、端正でおとなしい4ビート曲もやるし、EW&Fの「サン・ゴッテス」の屈託のないカヴァー(それも、75年にルイスはシングル・ヒットさせている)もやる。それらはどれも50 年を超えるこれまでの長いレコーディング・キャリアにおいてやっていることで、その広いネタを素直に括って出しただけと言う事も可能なのだが、やはりラムゼイ・ルイスを腰軽くいろんなことに向かわせたのは米国白人社会の差別や偏見ではなかったのか。今の彼は指が動かなくなってきていて、もどかしさを感じさせるときもある。だが、綺麗な身なりとともにエスタブリッシュされ感がばりばりの彼の円満な風情/ステージ・マナーに触れていると、それはシカゴから白い壁の向こう側に飛び出そうとしたルイス(35年生まれ)の輝かしい人生勝利宣言のように思えてきてしまったりもするのだ。あの笑顔の奥にあるいろいろな襞の存在、オールマイティなものを求める心の奥の陰影……。そんなもろもろに触れられて、否定的な気持ちになるはずがないではないか。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。
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