まず、京橋映画美学校第二試写室で、シンガー・ソングライターのあがた森魚のドキュメンタリー映画(竹藤佳世監督。10月10日から、シアターN渋谷で早朝/深夜公開)を見る。還暦を迎える彼が昨年8月の北海道から年末にかけて全国64カ所をキャンピング・カーで回るツアーの様子、および今年の2月22日に東京の九段会館で行われた特別仕立て公演“あがた森魚とZIPANG BOYZ號の夜”のリハや当日の模様(参加者のコメントもあり)を繋いだもの。あがた森魚に関しては殆ど聞いた事がなく、リッチではない簡素な設定のツアーの実演場面に触れてもぼくの好みとはかなり離れていてああそうですかで終わってしまうが、フォーク方面のツアーのあり方や機微を感じられるのはマル。現在、ものすごく過密状態の音楽家ツアー生活を送っている中川五郎(2005 年6月17日、他)さんのそれもそうなのかと興味津々に見れちゃう。なんでも撮っていいよと言っていたのだろう、飲んだときとかの、ときにメンドクセーぞと思わずにはいられない部分も写し取られている。そして、映画のハイライト部となる鈴木慶一(2004年12月12日)らはちみつぱい勢や矢野顕子(2009 年8月19日、他)らゲストいろいろの九段会館公演の部分は伴奏が充実している(ザ・バンドを洗練させたみたい、と思わせるときも)ためもあり、無理なく楽しめ、また彼が個性あるソングライターであることも確認できた。

 次は渋谷・AXで、ティル・チューズデイを経て、93年からソロとして活動している自作派女性シンガーを見る。冒頭で「普段やらないような曲を、アコースティック・セットで」とMCしたように、ギター(ときにベース)を弾きながら歌う彼女に二人のキーボード奏者(一部、打楽器やベース等を手にするときも)がサポートする形でショウは進められる。が、良く噛み合っていたそれは、彼女の作る曲趣や凛とした個体が支える歌の良さをくっきりと出していたのではないか。少なくても、普通にバンドでやった前回来日公演(2005年10月4日)のときとは訴求力は雲泥の差。古い曲やマニアックな曲にオーディエンスはおおいに湧く。本当に彼女の熱心なファンって少なくないんですね。もう少しで50歳になっちゃうマンさん、遠目にはいい女にも見えました。

 そして、六本木・ビルボードライブ東京に移動し、もう10年以上にもわたって質の高いクラブ・ミュージック経由のジャジー表現を送り出しているドイツのDJ集団ジャザノヴァのバンド(全9人編成)によるセットを見る(セカンド・ショウ)。ここでは打楽器を扱ったステファン・ライゼリングとアクセル・ライネメアの選抜構成員以外はアディッショナルな奏者たちであったのかな。ヴァーヴから出した新作『オブ・オール・ザ・シングス』は生音多用のふくよかな歌物ジャジー・ソウル作だったが、ここでもそう形容できるだろう音をソロ演奏もフィーチャーしつつ、屈託なく送り出していた。かつて、やはりジャザノヴァの構成員であるアレキサンダー・バークは今回来日したステファン・ライゼリングらとシーフという歌心と閃き満載のロック・ユニットによる『サンチャイルド』というアルバム(もう、最高!)を出した事があったが、あれの実演見てえ〜。

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