正義は勝つ(?)と控えめにガッツポーズ……。日比谷野外音楽堂。

 1週間前の天気予報では<晴れ>となっていたはずだが、数日前には雨天の予報が出されるようになり、当日は昼頃には雨が降りだす。うわー。少年のころ、ウッドストックの映画を見て雨天のあと泥だらけになる観客が映し出されて素敵だなと思ったことがあったはずであり、事実そういう場合は人より汚れるのが偉いというおバカなメンタリティの持ち主のはずなのだが、なんかいつのまにかワタシは汚れるどころか濡れるのもイヤと考えるようになってしまっている。うーぬ、見事な堕落ぶりに唖然となるなー。ほんの少し風邪っぽく、この時期(豚インフルエンザ。後から見るとなんのことだか分からなくなるので、書いておこう)、本格的に風邪を引くとシャレにならないとも思ったためもあるか。しかし、会場についたころには少し青空がのぞくようになり、雨の心配はなくなり、ぼくは冒頭の心持ちを得たのだった。

 今年は大西ユカリとウシャコダという日本勢と、クリス・トーマス・キングとロバート・クレイ・バンドの米国勢、全4組が出演。藤井康一(2005年11月9日)率いるウシャコダ(結成30年とか)からちゃんと見たが、ソウルとブルースの旨味をまっすぐに日本人的表現に転化した行き方には大きく頷かされずにはいられず。二管を付けての演奏もいいし、藤井もカッコ良くも味があるし、ほんといいバンドじゃないかっ。黒人音楽愛好者に顕著なユーモア感覚にもニッコリ。最後のほうで、ギタリストとベーシストはお互いの楽器を投げ合い楽器の交換をしようとするが、見事に両者とも受け取れず落とす。うひゃ。なんか見ていてとっても温かい気持ちにもなれたし、ソウル・ファンに悪い人はいない、なんて単細胞な思いもしっかり得た。

 新世代のブルースマンてな感じで80年代半ば過ぎに出たニューオーリンズ在中のブルースマン、クリス・トーマス・キング(64年生まれ)のパフォーマンスはドラムとのデュオにて。生ギターを弾きながら歌い、ときに電気ピアノを弾くとことも。ぼくには端正すぎるところがあったかな。ミレニアム以降はコーエン兄弟の『オー・ブラザー!』のサントラ参加やヴィム・ヴェンダースの『ソウル・オブ・マン』(2004年7月6日)に出演するなどして新たな聞き手を獲得しているようで、そうしたほうの顧客に合うパフォーマンスと言えなくもないのか。

 トーマスのショウが始まるころには陽もさしたりして、ちょい爽やかな気分も味わう。客層はけっこう高め(白人も散見される)だが、総じて円満。かつてのブルース・フェスは酔っぱらって騒ぐたちの悪いお客が散見されたもんなー。なぞと遠い目をしていたら、かつて現代ブルースの星として熱い注視を受けたクレイとそのバンド(キーボード、ベース、ドラム)が登場。張りのはる歌声と艶と緊張感のあるソロはやはり一級品。いろんなブルースやアーシーなR&Bのパターンを伝えんとするかのように、シンプルではあるが多様性ある楽曲を朗々と開いて行く。お、黒人音楽アンヴァサダー。彼は南部(53年)生まれの黒人ながら全然ブルース経験を持たずに普通にロックを愛好していたところ、高校生のときにブルースの存在を知り、その後ブルース道に邁進したという人(それは、白人ブルースマンや日本のブルースの担い手と同様の筋道ですね)で、それゆえの明晰さが吉でもありますね。

 この晩、夜9時過ぎには大雨になり、一時は雷雨も。24回を数えるそうだが、ジャパン・ブルース&ソウル・カーニヴァルに幸あれ! 


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