エリン・ボーディ。テレンス・ブランチャード
2009年3月26日 音楽 北欧ルーツの、ミネソタ州出身の女性シンガー/ソング・ライター。近年のアルバムでもバッキングしている同世代(行っても30代半ば。という感じ)のピアノ・トリオを伴ってのパフォーマンスで、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)にて。みんな初来日となるようだが、その4人の佇まいはいい感じ。楽曲の多くはピアニスト(1曲は生ギターを弾いたりも)とボーディの共作だが、ウッド・ベーシストとボーディは夫婦とか。それについて彼女がMCをすると、祝福の拍手/声が客席側から自然にこぼれる。そういうものを誘ういい感じを彼女たちは持っている。ドラマーはアフリカンだ。
思っていた以上に、味はいい。意外にポップ側の書き手が来ていて、それはみんな口にしていたな。簡単に言えばジャジーな女性ヴォーカル表現なのだが、あまり比較に出したくなるような人がいない、とも書けるか。伴奏はアルバムよりもずっとジャズ。一方、ボーディの歌はジャズ・ヴォーカル様式を踏むものではないが、音程や言葉の乗せ方は確かで、きっちりとピアノ・トリオ音の上に載る。彼女は可憐な声を持ち、声質自体がとても魅力的。変な説明になるが、ジャズとポップの間を行き来するのではなく、ポップとジャズが邪魔し合う事なくきっちり重なり合った先にある表現というか。本編のラスト2でやった曲のピアノ・ソロはもろにケニー・カークランドの名演(スティング&ザ・ブルー・タートル・バンドのA&M発86年ライヴ盤『ブリング・オン・ザ・ナイト』におけるタイトル・トラックでのソロ)を下敷きにしたもの。きっと昔、ピアニスト君は感化されまくったんだろうな。ポール・サイモンの曲なんかも披露していた。
続いて、南青山・ブルーノート東京に移り、ずっと充実したジャズを送り続けているテレンス・ブランチャード(2002年7月3日。2005年8月21日)の公演を見る。うーん、まいった。その演奏に漲る内実や手応えと言ったなら。正義のジャズ、という一言で、終わりにしたいぞお。
即興という真意と、積み上げられてきたジャズ様式を噛み締めつつ展開される、真摯にしてスリリングな丁々発止が90分。やれサウンド設定にしても、ソロにしても質が高すぎ! ブランチャードのトランペット・ソロの見事さに触れると、ぼくがおおいに買う同郷(ニューオーリンズ)後輩のクリスチャン・スコット(2008日7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日)はまだ青二才だと言うしかないな。あー、やっぱりジャズはすごい。うー、ジャズはいいナ。
サポート陣はウォルター・スミスⅢ(テナー)、フェビアン・アルマザン(ピアノ)、デリック・ホッジ(ベース)、ケンドリック・スコット(ドラム)という、ここところのテレンス作の録音メンバーでもある、彼のレギュラー・バンドの面々。うち、リズム・セクションはブランチャードの2002年と2005年の公演でもやってきている。それから、熟達ジャズ・ピアニストのマルグリュー・ミラーのトリオ表現にも関与するデリック・ホッジはジャズ界以上にソウル/ヒップホップ界で名が知られるかもしれない人物。両刀のジャズ・マンというとドラマーのカーリム・リギンズ(2005年9月15日)も知られるが、フィラデルフィア出身の彼はコモン(2004年6月11日〜同9月13日の項に記載、2005年9月15日)、ミュージック、Qティップ、フロエトリーらの作品にいろいろ関わっている。
それにしても、その4人はブランチャード・バンド以外でもいろいろ重なり、さらにはブランチャード・バンドの卒業生であるリオネル・ルエケ(2002年7月3日、2005年8月21日、2007年7月24日)やアーロン・パークス(2002年7月3日、2005年8月21日、2008年11月22日、2009年2月3日)、この4月にもコットンクラブにやってくるロバート・グラスパー(2001年8月18日、2007年10月3日)、クリスチャン・スコット、グレッチェン・パーラト(2009年2月3日)らとも関係を持っており、NY周辺の広角型の若手リアル・プレイヤーの間で一つの確かなサークルがあるような。
例えば、クリスチャン・スコットのグループにずっといる(今年1月の初のスコット・グループ公演はワン・ホーン編成ゆえに同行せず)ウォルター・スミスⅢと旧グラスパー・バンドで現パークス・バンドのギタリストのマイク・モレーノ(2008年11月22日)とも懇意にするケンドリック・スコットは同じヒューストン出身なのだが、それぞれ06年に出したリーダー作はお互いが客演し合うだけでなく、グラスパー、パークス、ルエケ、パーラトら共通する顔ぶれが参加していたりするのだ。後者のほうはデリック・ホッジも入っている。そして、パークスの後釜でブランチャード・バンドに入ったフェビアン・アルマザンはキューバ出身のニューヨーカーだが、パーラトとNYではデュオ公演をやったりもする……。
うーん、今のNYの相関図をおいかけたくなってきた。それに値する興味深い動きやアルバムが今、出てきていると思う。そして、繰り返すが、その頂点にいるかのようにそうした彼らを起用しているブランチャードのジャズは素晴らしい。
思っていた以上に、味はいい。意外にポップ側の書き手が来ていて、それはみんな口にしていたな。簡単に言えばジャジーな女性ヴォーカル表現なのだが、あまり比較に出したくなるような人がいない、とも書けるか。伴奏はアルバムよりもずっとジャズ。一方、ボーディの歌はジャズ・ヴォーカル様式を踏むものではないが、音程や言葉の乗せ方は確かで、きっちりとピアノ・トリオ音の上に載る。彼女は可憐な声を持ち、声質自体がとても魅力的。変な説明になるが、ジャズとポップの間を行き来するのではなく、ポップとジャズが邪魔し合う事なくきっちり重なり合った先にある表現というか。本編のラスト2でやった曲のピアノ・ソロはもろにケニー・カークランドの名演(スティング&ザ・ブルー・タートル・バンドのA&M発86年ライヴ盤『ブリング・オン・ザ・ナイト』におけるタイトル・トラックでのソロ)を下敷きにしたもの。きっと昔、ピアニスト君は感化されまくったんだろうな。ポール・サイモンの曲なんかも披露していた。
続いて、南青山・ブルーノート東京に移り、ずっと充実したジャズを送り続けているテレンス・ブランチャード(2002年7月3日。2005年8月21日)の公演を見る。うーん、まいった。その演奏に漲る内実や手応えと言ったなら。正義のジャズ、という一言で、終わりにしたいぞお。
即興という真意と、積み上げられてきたジャズ様式を噛み締めつつ展開される、真摯にしてスリリングな丁々発止が90分。やれサウンド設定にしても、ソロにしても質が高すぎ! ブランチャードのトランペット・ソロの見事さに触れると、ぼくがおおいに買う同郷(ニューオーリンズ)後輩のクリスチャン・スコット(2008日7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日)はまだ青二才だと言うしかないな。あー、やっぱりジャズはすごい。うー、ジャズはいいナ。
サポート陣はウォルター・スミスⅢ(テナー)、フェビアン・アルマザン(ピアノ)、デリック・ホッジ(ベース)、ケンドリック・スコット(ドラム)という、ここところのテレンス作の録音メンバーでもある、彼のレギュラー・バンドの面々。うち、リズム・セクションはブランチャードの2002年と2005年の公演でもやってきている。それから、熟達ジャズ・ピアニストのマルグリュー・ミラーのトリオ表現にも関与するデリック・ホッジはジャズ界以上にソウル/ヒップホップ界で名が知られるかもしれない人物。両刀のジャズ・マンというとドラマーのカーリム・リギンズ(2005年9月15日)も知られるが、フィラデルフィア出身の彼はコモン(2004年6月11日〜同9月13日の項に記載、2005年9月15日)、ミュージック、Qティップ、フロエトリーらの作品にいろいろ関わっている。
それにしても、その4人はブランチャード・バンド以外でもいろいろ重なり、さらにはブランチャード・バンドの卒業生であるリオネル・ルエケ(2002年7月3日、2005年8月21日、2007年7月24日)やアーロン・パークス(2002年7月3日、2005年8月21日、2008年11月22日、2009年2月3日)、この4月にもコットンクラブにやってくるロバート・グラスパー(2001年8月18日、2007年10月3日)、クリスチャン・スコット、グレッチェン・パーラト(2009年2月3日)らとも関係を持っており、NY周辺の広角型の若手リアル・プレイヤーの間で一つの確かなサークルがあるような。
例えば、クリスチャン・スコットのグループにずっといる(今年1月の初のスコット・グループ公演はワン・ホーン編成ゆえに同行せず)ウォルター・スミスⅢと旧グラスパー・バンドで現パークス・バンドのギタリストのマイク・モレーノ(2008年11月22日)とも懇意にするケンドリック・スコットは同じヒューストン出身なのだが、それぞれ06年に出したリーダー作はお互いが客演し合うだけでなく、グラスパー、パークス、ルエケ、パーラトら共通する顔ぶれが参加していたりするのだ。後者のほうはデリック・ホッジも入っている。そして、パークスの後釜でブランチャード・バンドに入ったフェビアン・アルマザンはキューバ出身のニューヨーカーだが、パーラトとNYではデュオ公演をやったりもする……。
うーん、今のNYの相関図をおいかけたくなってきた。それに値する興味深い動きやアルバムが今、出てきていると思う。そして、繰り返すが、その頂点にいるかのようにそうした彼らを起用しているブランチャードのジャズは素晴らしい。
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