渋谷・クラブクアトロ。一同が出てきたとき、あれれ日本人の前座があったのと一瞬おもう。だって、みんな赤基調の統一性を持たせた格好で出てきて、なんか初々しくもラヴリーなそれ、ある種の日本のバンドが持ちそうな風情だったから。彼女たち、米国でも似たような出で立ちで実演をやっているようだが。中央に赤色のセミアコのギターを弾きながら歌うクレア・マルダー、片側にはヴァイオリンを中心にいろんな楽器をつまみ食い気味に触る旦那のオリヴィエ・マンションと電気ベースやキーボードを担当する男性。そして、もう片側にはチェロとヴィオラをそれぞれ担当する女性奏者が位置する。みんな控えめながら、いい感じにコーラスをとった。

 かつてマルダーとマンションのデュオ・パフォーマンス(2005年5月22日)に触れたときには、その後二人がクレア&ザ・リーズンズ名義のもと越境と表裏一体の優美さやノスタルジー性をたんまり持つ、あんなにストーリー性豊かな夢心地作品を出すとはまったく想像できなかった。で、そのアルバム『ザ・ムーヴィー』を基にするライヴも多大な進歩/発展があるものだったな。

 人間性の良さと趣味の良さが微笑みながら重なる……。人数が限られる分、凝ったアルバムの純再現とは当然いかなかったが、ウィットたっぷりにほんわかと、もう一つの手作り音楽を送りだす様子にはフフフとなれた。ふんわり、満たされたな気持ちにも。途中、「オーヴァー・ザ・レインボー」のメロディでもって、“オバマ、オバマ、オバマ、オバマ”と米国新大統領の苗字だけを延々と歌うものを披露。クスっ。他愛ないけど、いいじゃん。本編最後の曲はティアーズ・フォー・フィアーズの大ヒット曲「エヴリバディ・ウォンツ・トゥ・ルール・ザ・ワールド」を静謐ぎみにやりました。


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