まず、ホンダのファミリー・カーのTV-CFに出ていたりもするショーン・レノンが新たに作ったレーベル、キメラ・ミュージックのお披露目をかねたライヴ・ショウを恵比寿・リキッドルームで見る。

 豪華顔ぶれが揃う。基本、バンドは日本人によるもので、ギターを黙々と弾く小山田圭吾やあらきゆうこ(ドラム)らに、在NYの元チボ・マットの本田ゆか(キーボード)らが加わる。で、そのバンドの前にギターを持つレノン、3人の外国人女性シンガー(うち、一人はレノンのガール・フレンドのよう)らが立ち、いろんな設定で曲が披露される。円満。そして、しなやか。後で名前をチェックしたら、なんと女性陣の一人はチャーリー・ヘイデン(2001年11月20日、2005年3月16日)の娘でベック他の表現に助力しまくり、リーダー作も出しているヴァイオリニスト/シンガーのペトラ・ヘイデン(レニー・ワロンカーの息子のジョーイとスペインというバンドや、同じくワロンカーの娘のアンナとザット・ドッグというバンドをやっていたこともあった)じゃないか。なお、妹のターニャ・ヘイデンは俳優のジャック・ブラックと結婚しているので、ブラックにとってペトラは義理の姉になる。さらに蛇足だが、そのヘイデン・シスターズやブラックやエルヴィス・コステロらが参加したチャーリー・ヘイデンの08年カントリー系ポップ作は目茶素敵な手触りを持つ。

 そして、最後には母親のヨーコ・オノが登場、このときが一番客は沸いたかな。もう、とっくに70歳を超えているはずだが、毅然と我が道を行っていたのは間違いない。アンコールを含め、彼女は3曲で奇声を発する。ショーン・レノンとは腹違いの兄、ジュリアン・レノンは今どういう暮らしをしているのか、ショウを見ているとき、そんなことを思ったりも。恵比寿・リキッドルーム。

 そして、南青山・ブルーノート東京に移動して、メイシオ・パーカー(2005年9月6日、2007年9月13日、他)。基本の顔ぶれは不動。ただし、トロンボーン奏者が元ホーニー・ホーンズのグレッグ・ボイジャーからかつてコートニー・パイン(2004年9月26日、他)の公演に動向していた英国人のデニス・ロリンズ(2000年5月30日、2001年3月12日)に代わっていた。で、なんにせよ、プロ意識みなぎる実演は好調。ほう、と感じたのは、ビートがより溜めた、含みを持つとも書ける、少しゆっくり目のそれでだいたい統一していたこと。JB曲でもそうだったので、それは意識的なはず。ファンクであることを貫きつつ、少し老成したノリを求めている、という所感もぼくは得た。「2%のジャズと、98%のファンク」という、かつての有名キャッチをメイシオは久しぶりにステージで言ったりも。2時間は平気でやった実演。十分、高揚した。

 後日、ショーン・レノンにはインタヴュー。基本は、静的な印象を与える人。やっぱり父親の面影はいろいろありで、父上の大ファンであるぼくは感慨深い。彼はなんのためらいもなく、父や母とのこともいろいろ話してくれる。キメラ・ミュージックはかつて所属したグランド・ロイヤルの趣味性なんかを手本にしたいところはあるみたい。とともに、統一バンドのもといろんな人が歌うというのは、モータウン・レヴューへの憧憬なんかもあるそう。彼はニック・ケイヴやキース・リチャーズ他らいろんな人が関与したハル・ウィルナー制作のマリアンヌ・フェイスフル新作に参加しているが、それは母親とフェイスフルが知り合いで両者から頼まれたそうで、ウィルナーとは面識がなかったそう。一曲だけ参加のはずがけっこう弾いちゃった、とか。

 彼は「ちょうどいい ほん」(講談社)という絵本を出したばかりだが、取材中に彼はぼくの顔をペンで描き出す。うひゃー。じっと、顔を覗き込まれたりして。“For Sato-san From Sean Lennon 2009AD”と署名付きのその絵は家宝とする。


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