男は黙ってフリー・ジャズ。な〜んて、思っていたことがありました。フリー・ジャズに入り込んだのは、ちょうどニュー・ウェイヴ・ロックが80年前後に猛威をふるっていたころかな。いろんなロックを追い求めるかたわら、ぼくはオーネット・コールマン一派をはじめとするファンキーなビートを伴う冒険ジャズ表現に夢中になり、その奥にあるフリー・ジャズのレコードもいろいろ漁るようになったのだ。あのころ、狼藉と越境を求めていろいろレコードを買い、一喜一憂していたなあ。そういう意味では、ぼくにとっての真のニュー・ウェイヴ・ロック体験というのは広義のフリー・ジャズを聞く事だったという言い方もできるかも。まあ、ノー・ニューヨーク一派やザ・ポップ・グループやリップ・リグ&パニックとか、そっちと繋がったニュー・ウェイヴ勢もいたしな。

 フリー・ジャズ大御所ドイツ人リード奏者のブロッツマンを主役に据えた公演。休憩をそれぞれ挟んで、3つのセットが持たれ、ブロッツマンは出ずっぱり。<東京コンフラックス2008>と名付けられた各国インプロヴァイザーが集合しお手合わせをする5日間に渡る帯イヴェントの最終日となる出し物。この日は、六本木・スーパーデラックス。

 まず、灰野敬二(ギター、歌)とのデュオ。まっこう即興、音を出し合い、反応しあう。両者、アハハな個性出る。ブロッツマンを見るのは約20年ぶり(そのころ、ビル・ラズウェエルが彼と懇意にしたがり、ラズウェル絡みで来日していた。cf.ラスト・イグジット)。顔を赤くしてブロウする姿や雄々しい音に、おお変わらないナと思う。おお、すごい、とも。オレはなんか年とって前より激しい音を聞かないようになっているもの……というのは、別にしても、変わらないことの尊さをなんか肌で感じた。超然、その言葉がブロッツマンには一番当てはまるかな。

 2番目は、琴の八木美知依(2008年8月24日)とノルウェイ人ドラムのポール・ニルセン・ラヴ(2005年4月12日)との3人で遊び、丁々発止。アンプリファイドしているとはいえ激しい応酬になると繊細な琴の音は聞こえにくくなるが、過剰に増幅すると琴の旨味から離れるという気持ちが八木にはあるのかな。ともあれ、ギター、ベース、ハープとか本当にいろんな楽器の効果を想起させる音を繰り出す様は愉快。でもって、琴という普段あまり接しない楽器が相手だと、外国人たちは新鮮なのかうれしそう。

 そして、3番目はリード奏者3人生音合戦。アメリカ人のケン・ヴァンダーマーク(今回が初来日とはびっくり)とスウェーデン人のマッツ・グスタフソン(ザ・シング、他。先のニールセンもザ・シングのメンバー)、との生音リード合戦。それぞれお手合わせしている間柄なためお互い手の内を知るところもあり、かなり意思統一された演奏(エンディングのさくっとした終り方を見てもそう感じる)を見せ、変化に富みつついろんなヴァリーエションをスリリングに提出。3曲目だったか。各サックス音の倍音を効果的に用いる重なり方は耳をひかれた。そして、最後には坂田明が入り、サックス四重奏となる。

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