マヌーシュ(ジプシー)・スウィングの第一人者である、キャラ立ちの在仏ギタリスト(2003年1月8日、2003年8月30日、他)。渋谷・デュオ。サイド・ギター、縦ベース、ヴァイオリンを従え、考える暇があったら指を動かせ、みたいな、気分おもむくままのパフォーマンスを見せる。根本にジャンゴ・ラインハルトの表現をおき、かちっと型にはまったところとはまらないところが綱引きしているような……。また、ちょっと見栄を切るようなところもあるけど、外連味なし、というふうにも言えるのか。まあ、異なる文化を持つ人たちの出し物とは絶対に思わせられますね。

 1時間ぐらいやった一部だけを見る。お客さんの反応も熱烈だし、通しだときっと2時間半コースになったんだろうな。とにかく、彼らは演奏のムシ。日本についた当日に演奏したいとバーを突発的にライヴ・ハウス化したのを皮切りに、ライヴのない日も楽器を飲み屋に持ち込み、演奏をしているという(実は昨日、渋谷近くの店でその様に触れました)。な、だけでなく、多分ライヴ後の打ち上げでも同様に演奏しているんだろう。……演奏することに対する価値観が違うんだろうな。もっと、それは日常に近く、ご飯を食べたりとか笑ったりするのに近かったりするのではないのか。演奏やりすぎて疲弊しないのか、それによりライヴ演奏の濃度が薄まったりするのではないかとかも考えたくなるが、笑いすぎて笑えなくなったという話は聞いた事ないもんなー。マヌーシュの団欒には必ずギターがあり、横にはジャンゴの写真が張ってあるという話も、彼らのパフォーマンスに触れると皮膚感覚で納得させられたりもしますね。

 つづいて、南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)で大御所米国人女性歌手(2000年5月10日)を見る。満席。ピアノ・トリオが2曲演奏したあとに登場したのだが、なんと彼女は車椅子に座り押されて出てくる(彼女の登場とともに、効果音的な音を出す二人のキーボード、ギター、二人のコーラスも加わる)。で、車椅子に座って歌う。そのためもあってか、少し歌声が不安定なところもあったが、もともと過剰に喉力を持つ人ではないし、そうした事もいろんなストーリーが付加した現在はナタリーの味〜芸風として納得できるものではないか。彼女が、歌うのはジャズ・スタンダード。一応新作となる『リーヴィン』はけっこうロックっぽいポップ曲カヴァー集(もともと、彼女はロック・ファンだったと言われますね)で今回はどういう路線で行くのかなと思ったら、素直に近年の彼女のファンが抱くだろうゆったりジャジー路線をまっとうしていた。MCによれば秋に出る新作はアメリカの財産を振り返るようなスタンダード・ソング集だそう。もちろん、お父さんナット・キング・コールとの例の擬似デュエットもありました。

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