82年生まれと79年生まれ。パリを拠点とする女性シンガー・ソングライターが二人出る公演。ラフォーレミュージアム原宿。

 まず、パリ生まれながら2歳から近年までナイジェリアのラゴスで暮らして、ラゴスっ子であるのを自認するアシャのパフォーマンス。アコースティック・ギターを手にする彼女に確かな技量を持つ男性ギタリスト、そして女性バッキング歌手という布陣。コーラスを取るそのジャネットさんはアシャとは学生時代からの付き合いで、マネージャー役も兼ねる。なんか、ノラ・ジョーンズにおけるダルー・オダみたいな感じだな。

 好きなアーティストは問うと、ボブ・マーリーやマーヴィン・ゲイ他、米英の担い手とまったく同じような人たちの名前をアシャは挙げる。ちゃんとギターを手に歌うようになったのは18歳からというのにはビックリだが、きっちりと心の琴線に触れる曲を書き(多くは英語)、それをひっかかりのある歌声で歌える人。全面的にグローヴァルなポップ流儀に則ってはいるものの、どこかにアフリカを想起させる広がり〜愁いを持つわけで、それもいい感じと確実に思わせる人ですね。

 意外なところでは、アシャはレイ・チャールズが大好きなよう。そういえば、同郷のキザイア・ジョーンズ(1999年9月29日)はチャールズを大好きでギターに写真をはっていたっけ。そのことを伝えると、ジョーンズのことは良く知っているという。で、ナイジェリアというと、やはりなんといってもフェラ・クティだが、彼女は子供のとき一度だけその公演を見たことがあるそう。また息子たちとも知り合いでフェミ・クティ(2000年4月14日、2003年7月30日)のほうは前座をつとめたこともあるとか。それから無頓着なところもある人で、デビュー作のジャケット写真が逆版である理由を尋ねたら、その事を認知していなかった(!)。そしたら、横からジャネットがデザイン上の都合でそうしたの、とアシストしてくる。そんな彼女たちは、この9月にちゃんとしたバンド編成で再来日する

 続いて、パリ生まれ、イスラエル育ちのナイムのパフォーマンス。こちらは、ドラマー(彼女のアルバムのプロデューサーも務めるDavid Donatien。そんな目立つ演奏はしていなかったが、もらったセット・リストのアーティスト表記はナイムと彼の連名のものになっていた。嫌らしい推測になるが、おそらくギャラの取り分は両者対等なんだろう)、ベース、キーボード奏者がサポート。ナイムは生ギターやグランド・ピアノやウクレレを弾きながら歌う。

 いろんな文化や音楽スタイルをふまえての、瑞々しいシンガー・ソングライター表現を見事聞かせる。のびやか、しなやか。そして、おしとやか、という形容もできるかもしれないが、その奥にやんちゃな好奇心も滲ませていて、こんなに聞き味/佇まいが良質な人であるとは。アップル社のCF曲に採用され知名度を得たとのことだが、そりゃ確かな選択だなあと、ライヴに触れながら実感。長身ぼんぼん風のキーボード奏者はとっても感覚的な音/フレイズを出す人、すぐにベック(1999年4月12日、2000年5月29日、2001年8月18日、2003年4月1日)やモレーノ・ヴェローゾたちのユニット(2001年5月18日、2006年6月27日、2007年7月25日)に加われそう、と書くと、その様は分かってもらえるか。そんな持ち味の奏者を雇うところにも彼女の目指す表現の襞は表れているはず。

 途中一曲、アシャも加わる。両者は顔見知りで、フランスでの共演経験もあるよう。二人とも日本で出来ることをとても嬉しく思い、誠意をもってオーディエンスに対しているのがよく分かる。そういうのに、触れるのは本当に気持ちいい。ましてや、その二人はともに傾聴すべき才を持つ人なのだから余計に。いい余韻をたっぷり得た夜でした。

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