アメリカの若手ジャズ歌手3人を、日本人のピアノ・トリオ(ちゃんとしていた)がバッキングするという出し物。渋谷・JZブラット(セカンド・ショウ)。演奏陣だけのパフォーマンスはなし、一曲目から歌手が出てきて歌い、一人の持ち時間は20分づつ。歌う順番は年齢順、という話であった。契約に入っているのか、3人ともきっちりドレスを身につけてパフォーマンスする。

 まず、中西部出身のおっとりした美形お嬢さんという感じのサプートが登場。ジャズ・ヴォーカルはジャズのヴァリエーション中におけるむっつりスケベ親父の嗜好品といった部分もなくはないが、そうした需用にばっちり答える存在といえる感じ。素直に、和み傾向にあるジャズ・ヴォーカル表現を披露。

 で、2番目はセリック。褐色の肌に長い部分だと股の付け根より長いドレッド・ロックスという出で立ち。その快活でぶっちゃけた私全開の振る舞いに触れると、ドレスを着ていることにかなり違和感を覚えてしまう。が、キャラ込みで、ジャズを自分なりに着こなす様(ビートはタイト目なものも採用)には深く同感。もしかすると、純粋な歌唱能力は3人の中で一番低いかもしれないが、ちゃんと個性を出したそれにはいたく頷いちゃったナ。ジャズ様式に憧れる私ではなく、自分をだすためにジャズをしたたかに活用する私がそこにはいた。

 そして、3番目は長身なアフリカンであるヘンリー。個人をだせて個人技にもすぐれ、なるほど彼女がトリなのは年齢順という説明じゃなくてもおおいに納得かな。ときに、R&Bぽい迸りもあるそれにはぐいぐい引き込まれる。アリサ・フランクリン他で知られるキャロル・キング曲「ナチュラル・ウーマン」のカヴァー、とっても素敵でした。セリックにしろ彼女にしろ、ウイットを交えつつ、MCで自分の意見を違和感なくだしていたのは大マル。彼女はブッシュ批判をさらりとしていた。

 けっこう、いいモン見ちゃったナと思わせられたのは、とっても3人が仲良しに見えたこと(この晩が、この面子による日本ツアーの最終日だったよう)。それぞれが、それぞれのショウをリスペクトとともに見守り、シェアし合うという風情に溢れていたもの。また、彼女たちはサポートの日本人3人にも丁寧に気持ちを向けていた。みんな仲良し、外側だけかもしれぬが、そういうのに触れるのは気持ちいい。その後のお酒もおいしかったし、いい晩であった。

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