渋谷・クラブクアトロ。同じレーベル(アート&クラフツ)に所属する、カナダ一番の大都市トロントをベースにするロック勢が二組出る公演。かなり混んでいて場内、タバコの煙がけむい。まず、スターズが出てきて、飄々とパフォーマンス。女性を含む、6人にて。ときにハモりも用いたりしての、ほんわかしつつサバけた大人のロックを提供。

 そして、カナダの現代ロック界の質をプロパガンダしよう(?)とする、芸と視点あるミュージシャンの集合体であるブロークン・ソーシャル・シーン。その関与者は2007年1月19日のときも、来日していたりしてますね。最初は7人ぐらいステージにいたかな、うちギターを持った人が4人。そんなに必要ないけど。和気あいあいながら、創意工夫や心意気も持つ、なんとなく今っぽいロックを送り出す。いろんな曲調のブツを披露するが、そりゃ船頭が多ければいろんなものが出てくるだろう。途中、日本人が大半の管楽器隊が付いたり、ズボンズ(2000年12月18日、2001年12月2日、2004年5月7日、他)のドン・マツオ(2006年9月24日)がギターで入ったり。また,スターズの人が出てきたときもあったろう。それなりにめまぐるしいが、そういう臨機応変さや間口の緩さは、しなやかな大人の所作という内実の表出につながる。人の良さのようなものはアタマから終わりまで出ていて、いいなあカナダ。そう感じてしまう人が多かったのではないか。

 カナダという国は英語とフランス語の両方を公用語と定めた国である。フランス語がメインとなるケベック州は別としても、何ゆえに余裕ぶっこいてそういう効率の悪いことをするんだろう。そう思ったことがぼくはあったが、この晩のカナダ勢の好演に触れて、なんとなく納得したりもしたかな。フランス語も使いましょうとしているのは、アイデンティティを持ってきっちり米国と線引きしたいとする表れではないか。英語だけだと、陸続きの同じ北米にある国ということで、アメリカのがさつで即物的なマテリアル・カルチャー(と、ここでは分かりやすくするために書いてしまう。いいところも、一杯あるだろうけど)に侵略/淘汰されてしまうという危惧への対処……。実際のところどうだか知らないが、アメリカのロック語彙をいろいろと受けつつもしなやかに自立する彼らの姿を見て、ぼくはそんな妄想を得た。

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