ジョン・ピザレリ

2008年1月14日
 ロックといってもいろいろあるように、ジャズと言われる表現にもいろい
ろある。この晩に見た洒脱系シンガー/ギタリストのジョン・ピザレリはそ
うとう柔らかい方向にある和み傾向のジャズ表現を聞かせる人と言えるだろ
う。彼の父親はバッキー・ピザレリというスウィンギンなジャズとサバけた
イージー・リスニングの間を行き来してきたギタリストで、ジョン・ピザレ
リは父親と同じ道(レトロ味のギタリスト)を歩みつつ、それだけじゃ芸が
ないと思ったのか飄々とした質感を持つ歌もうたっており、地元ニュージャ
ージーの大学を卒業してすぐにアルバムを出して以降、おおむね順調に来て
いる人物だ。キャリアを重ねるごとに小粒ではあるが、ナット・キング・コ
ールやフランク・シナトラに代表されるようなジャズとポピュラー・ヴォー
カルを兼ねるようなスタイルを見せるようにも彼はなっている。

 なーんて、わかったフリして書いているが、ジャズに狂気や越境や血や精
液の感覚を求めるぼくはその名は知っていてもちゃんとその表現を聞いたこ
とはなかった。が、ある雑誌からライヴ評の打診があったのも何かのご縁、
新年で浮足立っている(今週は3件、新年会の予定が入っているなー)こと
だし、和みのジャズ・ヴォーカル表現もいいんでないかい、と聞きにいった
わけ。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。この冬、一番の寒
さとのことで、初めて家でエアコンを大々的に使用(相変わらず、洒落でエ
コロな生活をやろうとしてまーす)。でも、外に出たら過剰に寒くなかった
よーな。

 そしたら、まあ予想どおり、新年ボケの耳には心地よい、スウィンギンか
つ娯楽精神に満ちたパフォーマンスが適切な緩さとともに、スタンダード曲
中心にて展開される。ギターを持ち歌う(枯れた、ときにユーモア感覚を持
つソロも取る)ピサレリを、ピアノ、ベース(ジョン・ピザレリの弟)、ド
ラムがソツなくバッキング。みんなちゃんとスーツ着用、それが似合う実演
だったとも書けるかな。

 ジャズの横にあるポップ表現やエンターテインメント感覚や末広がりの気
分やハレの場の感覚、……そこにはある種のアメリカで温められてきた娯楽
にまつわる記号が山のように折り込まれていたのは間違いない。なお、若い
ころの写真を見るといかにも育ちのいい好青年という風情のピサレリだが、
初めて触れる彼(60年生まれ。イタリア系なのかな。なんにせよ、ラテン入
っている感じ)はかなりオヤジくさくなっていて、ディーン・マーティン的
というか、ちょい悪代官ふうだった。
 

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