渡辺貞夫

2007年12月16日
 渋谷・オーチャードホール、2部構成にて。ラッセル・フェランテ(ピア
ノ)、デイヴィッド・フィンク(ベース)、マーカス・ベイラー(ドラム)
という3人を従えた、純アコースティックなパフォーマンス。フェランテと
ベイラーは西海岸の長寿コンテンポラリー・ジャズ・バンドのイエロージャ
ケッツのメンバー。今月13日の項で、偶然、ジーン・ベイラーとの関係を推
測しているが、マーカス・ベイラーはやっぱし旦那だそう。たまたま、それ
ぞれ別の仕事で東京に来ているわけだ。

 派手なフレーズを出すフィンクは今のジャズ界でやたら立った弾き方が
出来るアコースティック・ベース奏者の筆頭格。その演奏から少し似た弾き
口を持つジェシー・マーフィ(2002年1月24日、2005年8月17日)のような
多少今っぽい外見の持ち主なのかと思えば普通の行儀良さそうなおじさん(
すごく、長身)で多少拍子ぬけ。また、ベイラーも純4ビートとは少し(と
きに、だいぶ)離れる叩き方をする人で、そのリズム・セクションはそれだ
けで“安住の地”に止まることを拒否するノリを出していたか。フェランテ
の事を大昔にぼくはフュージョン界のなかでもっともセロニアス・モンク的
な美しい捩じれを持つ人物と書いた事があるが、今回の顔ぶれはフェランテ
とフィンクのことを大好きな渡辺貞夫がまず選択し、フェランテの推薦でベ
イラーがそこに加わったという流れを持つようだ。

 披露する楽曲は渡辺貞夫のオリジナルを中心に、スタンダードも。2部は
押鐘貴之ストリングスという15ピースの弦音隊がカルッテット演奏に加わる
。そのアレンジは部分的に指揮もしていたフェランテがやっている模様。ス
トリングス音が無指揮のもと途中からすうっと入ってくる場面もあったが、
それなりにリハは積んだのかな。当初、ぎこちなく感じる部分もなくはなか
ったが、優美だったりダンディだったりする情緒をストリングスは加えてい
たはずだ。“ウィズ・ストリングス”というと渡辺貞夫のなかにはチャーリー
・パーカーのそれが強くあるようだが、彼は今回すべてアルト・サックスで
押し切った。

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