木下航志

2007年8月29日
 ここのところ、少し秋っぽい感じも出てきて、少し過ごしやすくなって来
ている。この日は雨天気味。品川・品川教会。1989年生まれの、盲目のシン
ガー/ピアニスト。スティーヴィー・ワンダーが大好きで、散々聞いて自分
の表現の土台を作ってきたきた人なんだろうな思わせるパフォーマンスを2
部構成にて。子供づれからそれなりに年配の人までかなり客層は広い。

 1部は基本ベースと生ギターを従えて、オリジナル曲を中心に披露。ギタ
ー奏者は不要だったかもしれない。声質はけっこう太い、そう感じるのはス
ティーヴィー・ワンダーのそれと比較してしまうせいか。ちょっとぼくにと
っては不自然に感じる声の張り上げ方をするが、それもスティーヴィー・ワ
ンダー耽溺から来ているんだろう。楽曲も同様にアイドルのそれを通過して
いるのがよく分かる。が、そのうえにもう一つの澄んだ情感、切実さを彼は
持つ。最後には、「竹田の子守歌」のアダプト曲を。それを聞きながら、彼
なりのソウル表現の引き金はいろんなところにあるんだろうなと思う。もし
、彼がスティーヴィー・ワンダーではなく、例えばハマったのがビリー・ジ
ョエルだったら……。これだけ高い咀嚼能力を持つ人、それはそれで質の高
い普遍的なポップ・ミュージックの担い手になったんじゃないか。なんてこ
とも、休憩時に感じた。

 2部はもう少し大きな編成(ながら、フル・ドラムは用いず、やはりアン
プラグドのり。それは会場の制約だろう)にて、ソウル曲カヴァーを真っ直
ぐに披露。確か冒頭2曲はオルガンとのデュオだったが、その設定かなり良
し。おもしろいのは、「ワイルド・ホーシズ」(ストーンズ)、「サマー・
ブリーズ」(シールズ&クロフツ)、「明日にかける橋」(サイモン&ガー
ファンクル)ら、ロック有名ヒット曲を取り上げていたこと。彼はアリシア
・キーズやアイズリーズ他、R&Bカヴァー・ヴァージョンでそれらの曲の
存在を知ったようだけど。それら手触りのいい実演に触れながら、高校の勉
強なんかおろそかにしていいから、どんどんいろんな音楽に触れて(結局、
それはいろんな世界や価値観や機微に触れることになるはず)“木下航志と
いう太い音楽回路”を隆々と築きいてほしいナと思う。本当に今、伸び盛り
だろうし。
 

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