有楽町・コットンクラブ、セカンド・ショウ。ジャイヴ・レコードから05
年にアルバムを出している(店内販売していたが、映像商品やCDなど仲間
たちといろいろ出しているのね)、ネオ・ソウル(70年頃のマーヴィン・ゲ
イらのしなやかソウルに対する、今の人達の憧憬表現についた呼称)の担い
手。が、多くの同勢が提出するものをはるかに超える内実を送り出してくれ
て、びっくり。感激した。

 ステージに、楽器とともに絵が10枚ほど置かれている。DJが音楽を流す
なか、メンバーが登場。キーボード、電気ベース、ドラム、男性バッキング
・ヴォーカル二人。そして、ヴォーカルの当人とともに、ペインターがステ
ージに上がる。ペインターは演奏中、白いTシャツを張ったキャンバスの上
に絵をカラフルに描きはじめ、その終わりには1枚の完成品を仕上げる。な
るほど、ステージ上に飾ってあるのは、他の日(この日は3日目、のべ6度
目となるショウとなる)に描いた絵もあるのネ。なんか、仲間とともに自在
に自分たちにポップ・アート表現を求めたいのダ、という気持ちはよく伝わ
ってきた。
 
 当人の冒頭のMCはヒップホップ風だが、とても歌える。終盤、DJやバ
ック・コーラス陣もフィーチャーされたが、みんなそれなりに歌えるな。そ
んな彼らは、ほとんど切れ目なしに、壮大なサウンドスケイプといった感を
抱かせるパフォーマンスをしなやかかかつエモーショナルに展開していく。
ラテンとレゲエのビートを肉感的に交錯させていく曲もあれば、オーセンテ
ィックなソウル感覚に貫かれた曲(ほんの少し、伝統的ソウル・ショウを受
けた、設定やステージ・アクションもあり)もあるし、EW&F曲やレッド
・ツッペリン曲の大胆な人力サンプリング使用曲もあり。それらは有機的に
繋がりながら、今の確かなソウルの形を作っていく。そして、それを支えて
いたのは、3人ながら強さや流動性を両立させていた演奏陣であったのは間
違いない。まだ若そうだったが、彼らも素晴らしい。

 で、そんな人達を雇い、自分の意のまま演奏させているデヴォーンは凄い
ときっちり思わせられもするわけ。そんな、素敵な事ってあるかい。基本を
抑えたうえで、自分のソウルを、今のソウルをという気持ちがあふれ、結果
それを実に明晰に彼は具現。見事すぎました。

 家に帰ってから資料を見て、彼の父親はジュリアス・ヘンフィルやアーサ
ー・ブライスとの共演でなにより知られるNYロフト・ジャズ系チェロ奏者
のアブドゥル・ワダッドであると知る。うわあ。ワダッドも参加のブライス作
『イリュージョンズ』(コロムビア、80年)はいまだはみ出しビート・ジャ
ズの金字塔だし、たまに聞いて高揚する。なるほど、あの才人の息子なら、
この才気のあり具合も当然ではないか、との感を強くした。

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