フィリップ・ウー

2007年6月6日
 現在は日本で活動している、メイズにいた中国系アメリカ人キーボード
奏者が仕切るライヴで、ビリー・プレストン(1946年〜2006年)に捧げたも
の。プレストンはゴスペルの底無し/枠無しのマジックを素に鮮やかに多彩
なポップ表現を送りだした唯一無二の人。そんな大好きなプレストン曲が聞
ければと、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)に行く。いつもより、女
性同士の客がとても多い。

 各種キーボードを弾くウーに、在日アメリカ人が中心となった編成。曲に
よっては、三管もつく。で、実演に接しながらR&B/ファンクの特殊性に
も頭が向かう。だって、基本的にプライドあるプロのロッカーのライヴだっ
たら全部カヴァーのライヴなんて考えられないし、ぼくも絶対にいきたくな
い。それは、ロックは基本的にオリジナルで勝負するべきものという認識が
ぼくのなかであるからか。ロックは発想やアイデアがまず優先される音楽で
あり、R&Bは味や積み重ねを重視する音楽であるということなのだろうか。

 ちょっと首をかしげたのは「ゲット・バック」と「レット・イット・ビ
ー」、ザ・ビートルズ曲を2曲やったこと。確かに、プレストンはザ・ビー
トルズとザ・ローリング・ストーンズという二つの名UKバンドの表現を助
けており、それも彼の天賦の才を語ることの大きな材料だ。だけど、やるな
らまずはストーンズ曲でしょう。ザ・ビートルズに係わったのは後期の一時
期だけだったが、ストーンズの場合は70年代初頭から5枚ものアルバムにじ
っくり関与、間違いなく同時期のストーンズ表現はプレストンから多大な貢
献を受けていた(確かキース・リチャーズだったか、あの頃はプレストンに
やんわり牛耳られていた、みたいな発言もあったはず)。そして、その時期
こそがストーンズの黄金期であるとぼくは確信する。『ブラック&ブルー』
収録の「メロディ」はプレストン既発曲を改作したもの、たとえばそれを演
奏してほしかった。

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