冒頭、ジョン・フルシアンテがギターをファンキーに刻みはじめ、そこに
フリーが雄弁なベースのフレイズを絡める。おおカッコいいと、すぐに興奮
。そこにドラムのチャド・スミスが加わり、でだし1曲目はジャム・バンド
状態の流動的なインスト。いけてるじゃん。2曲目以降、フロント・マンの
アンソニー・キーディスが加わる。アンコール部(その冒頭、フリーはトラ
ンペット演奏をたっぷり披露したりも)でも歌のキーディスはいつのまにか
下がり、3人の丁々発止で終わった。本編でも、けっこうジャムぽいと思わ
せる断片はあったな。

 3月に予定されていたものが延期になった公演、東京ドーム(その場内広
告ペイントの実に田舎臭いこと)。企業冠はついいていない。当然ここは野
球や大雑把なイヴェントのためのスペースであって、音楽を披露するには音
響の部分などで非常に不向き。メッセとかもそうだが、できるならここでは
音楽コンサートを見たくない。ましてや、ぼくは付和雷同を避けたいと思う
タイプの人間であり、今のレッド・ホット・チリ・ペッパーズにも積極的な
気持ちを持つことができない。最新作の2枚組には曲作りに息苦しさを覚え
(自然発生的ではなく、技巧的に作っているように感じてしまう)、好きじ
ゃない。なのに、やはりドキドキしちゃうのは、破格なもの、過剰なイヴェン
トに対して、心地よさを感じるからなのだろうか。

 そんなぼくがドームのようなアリーナ会場の音楽公演に望むのは、技術と
アイデアの粋をとことん凝らしての、仕掛けたっぷりの大エンターテインメ
ント・ショウであること。が、そういう部分において、レッド・ホット・チ
リ・ペッパーズのコンサートはとてもフツー。芸がない。ステージ後方にヴ
ィジョンが置かれいろいろと用いられるがそれは常識的なものであるし、ス
テージ美術にもお金はかけてないし、通常のこの手のアリーナ公演より、レ
ッド・ホット・チリ・ペッパーズのそれの上がりは相当大きいと見た。
 
 だが、ぼくはずっとニッコリしながら聞けた。たとえば、<ライヴ三昧>
が始まってからは、ジョージ・クリントンが最後に飛び入りした2002年7月
28日フジ・ロックと2002年11月2日幕張メッセ公演をぼくは見ているわけ
が、どー考えてもそのときより彼らは力を持ち、感情移入を誘った(クリン
トン乱入時は別。あの瞬間は興奮した!)。実は先の二つの公演は彼らが諦
観ロック期間に入ってからのもので、アンコールの「ギヴ・イット・アウェ
イ」以外はほぼリズムがはねない黄昏曲を取り上げていたわけだが、今回は
けっこうハネ曲を採用していたという事実はぼくの好印象につながる最大要
因となっているのだろう。それだと、キーディスの喉の弱さも表に出にくく
なるし、メロディアス曲の味わい深さも再認識できるし、やっぱアップな曲
あってのレッド・ホット・チリ・ペッパーズではないか。とはいえ、一般的
な観客の反応はビート曲より静か目の曲に対する反応のほうが大きいわけで
、多くの人の感想はまた異なるのかも知れない。また、今回の曲目は昨年
のフジ・ロック出演時のときと同じものだそうで、それに触れていたらぼく
もまた別の感想を持つかもしれない。

 ただ、それほど仕掛けにこらず、彼らがきっちり4人で事をまっとうした
のはまぎれもない事実なのだ。

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