米国音楽セレブとも言えるだろう(2005年11月13日参照)、プロデュー
サー/ドラマーのスティーヴ・ジョーダンが奥さんのミーガン・ヴォス(ヴ
ォーカル、ギター)と組んでいる趣味のユニットがザ・ヴァーブスだ。当の
ジョーダンはクラプトン(2006年11月20日)のバッキングで11月初旬に
日本に来たままずっといるという。その前も5〜7月に英国/欧州を回り、
9月下旬から1か月間米国をツアーしていたので、06年は相当プロデュース
/スタジオ仕事はセーヴした年になるんだろうな。

 でも、その合間にジョーダンのことを大好きな奥田民生(2000年6月22
日、2003年3月13日)とレコーディングをNYでしたようで、多分世界で
初実現したと思われるザ・ヴァーブスの公演は奥田が入ってのもの。彼はギ
ター奏者として頭から最後までくわわった。

 ザ・ヴァーブスの同行ギタリストとベーシストが超ネーム・ヴリューを持つ
人たち。というか、アルバムに入っていた人たちがまんま来ており、さすが
ジョーダンは人望があるのだな。ギターは西海岸の大重鎮セッション・ギタ
リストのダニー・コーチマーで、80年代中期にジョーダンがロック界で需要
が伸びつつあるときの恩人。NY在住のジョーダンは西海岸で仕事があると
可愛がってくれるコーチマーの家に泊めてもらっていたんだよね。いっぽう
、ベースはここのところジョーダンとコンビを組んだりもしている英国出身
の名手ピノ・パラディーノ。なお、バック・ヴォーカルの女性がもう一人い
て、紹介のとき姓が同じだったので、彼女はパラディーノの奥さんだったの
ではないかな。ああ、アフリカン・アメリカンはジョーダン一人だ。

 という布陣にて(相当、平均年齢は高いはず)、余裕のノリでポップ・ロ
ックを展開。ヴォスは普段はパフォーマンスしていないはずで声がヘロった
りするが、会場に来ていた7割は奥田のファンであり、残りの多くが演奏陣
の勇士に触れられればという人たちだったので、そんなに気にもならなかっ
たのではないか。いい雰囲気が終始流れていたし。

 そうしたなか一番印象に残ったのは、どの曲もジョーダンのカウントから
始まるのだが、笑っちゃうぐらいにデカい声できっちりと「1、2、1、2
、3、4」と彼が言うこと。85年のジャマラディーン・タクーマ来日公演で
のそれを思わず思い出した。デカい声でカウントする奴に悪いやつはいない
。うん、間違いない。

 コーチマーはブルーノート主体でシングル・トーンのちゃらいソロを取っ
たりし、ウーンそれはけっこうぼくの嫌いなパターンのそれ。自適悠々ぽい
初老人の彼は中盤以降、2、3回ソロとるときステージ前にまでずずいと出
て来てこれみよがしに、嬉しそうにやったりも。「突然、今日は長いシール
ドを使っている」みたいなことを奥田がMCで言っていたので、この晩から始
めたようだが。いっぽう、奥田は中盤に男性陣だけをバックに自分の持ち歌
を歌ったりも。これもまたとてっても嬉しそうにして、気持ちよさそう。そ
れは、今年出たジョン・メイヤーのライヴ盤の主役を変えたようなもの、と
説明するのが適切か。

 新高島・横浜ブリッツ。出来て2年強たつ会場だが初めて行く。なるほど
旧赤坂ブリッツと似た感じのハコ。ところで、ジョーダンが日本を離れるの
は大晦日だという。ECバンドは年が開けて1月中旬から1か月東南アジア
/オセアニアを回り、2月下旬から4月上旬にはまた北米を回る……。ふう
。書いてて気が遠くなる。

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