フランク・マッコム

2006年12月7日
 今年、二度目(9月3日)となる来日。丸の内・コットンクラブ、ファー
スト。30分近く前に行ったのに、会場入りするとけっこう席が埋まっていて
びっくり。ミュージシャンズ・ミュージシャンである彼はプリンスからの覚
えもめでたいが、そのきっかけを作った気心知れたサポート・メンバー(20
04年4月15日のときは、その顔ぶれによる。簡単に書いてしまえば、ベイエ
リア・サウンド・フェチのプリンスは、マッコムのバンドで弾く同地拠点ベ
ース奏者のレイモンド・マッキンレーと知り合いだった)ではなく、若いプ
レイヤーたち、電気ベースとドラムとパーカッションを従えてのもの。

 1曲目や二曲目のときは多少おちつかなかった。インタープレイ箇所が長
く、ベースとドラムの音が大きすぎて。それは、彼の円満な”ピアノ・マン
流儀”を消し去る方向にあるものだから。が、そのうち、ソロも聞かせるが
じっくり歌を聞かせるパフォーマンスを彼はしていたし(04年ライヴのとき
のように、インスト曲をやることもなかったし)、そのリズム隊が実はとっ
ても腕利きであり、耳を傾けるべき事をやっていたことも、ぼくの心の曇り
を晴らしたのかもしれない。とはいえ、ベースとドラムは音があまりに大き
すぎ、それにくらべ鍵盤の音は小さすぎ、なのは間違いなかったが。

 ぼくはマッコムがソロを弾かなくてもいいとは思う人間だが(そういう、
実演も見てみたいよなあ)、彼が鍵盤さばきをいっぱい披露しようとするの
は判らなくもない。だって、そうじゃないともっとダニー・ハサウェイ(彼
もライヴではインスト曲もやっていたけど)やステーヴィ・ワンダーの持ち
味に近づいてしまうわけで、俺はそれだけじゃないんだよという自我のよう
なものを彼が持ってもなんら不思議はないから。ハサウェイたちの追体験を
与えるためだけの存在に甘んじるのは、そりゃやだろうなあ。聞き手が3分
の1になってもいい、という覚悟があるなら、彼は自分の流儀を貫くべきだ。
ぼくは2回見るのを、1回に減らすだろうけど。

 フェンダー・ローズ(エレピ)をときにエフェクターをかましつつ弾いて
いた彼だが、一曲だけはグランド・ピアノを弾きながら、弾き語り基調(途
中から、バンドはとっても薄目に音を加えり)でパフォーマンス。スタンダ
ードっぽい曲だったせいもありとってもよかった。なお、彼のエレピのソロ
演奏の90パーセントはハービー・ハンコックの『スラスト』や『マンチャイ
ルド』で見せているものの流用。ほんとうに好きで、昔真似しまくったんだ
ろうなあ。

 1時間20分ぐらいの実演。結局、ぼくは満足した。


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