アメル・ラリュー

2006年10月13日
 元グルーヴ・セオリー(10年前以上のグループ、どのぐらい人が記憶に止
めているか。なんて書くのは、ぼくにとってあまりピンと来るグループでは
なかったからか)の、才気走った流動系R&B表現を追求しているオルタナ派
の黒人女性シンガー。過去の項(2000年6月13日、2004年5月10日)で
はアメール・ラリューと記してきたけど、新譜表記(その『モーニング』は
かなりの出来と思う)とかアメルになっているので今回はそれに従う。丸の
内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。

 おお、相変わらず、スキャットかましまくり。いや、その全体表現に占め
る割合は過去以上か。歌う曲もぬめぬめしたメロディ/質感を持つものゆえ
、そういう印象はより増幅される。彼女は普通に歌っている場合も肉声の多
重効果を求めるために、バッキング・コーラス担当者との絡みを鋭意求めた
りもする。繰り返すが、スキャット活用頻度は普通のジャズ・シンガー以上
だろう。だが、彼女は今のビート、今のネオ・ソウル的感性と繋がりを持っ
た設定のなかで、それを延々としようとする。だからこそ、ジャズ・ヴォー
カルとは一線を画す妙味や今の先鋭R&Bとしての輝きが出る……というわけ。
00年のときのように不可解なエフェクトをヴォーカルにかますこともなかっ
たし、04年時のように過剰に気張って聞く者を退かせることもなく、そうし
た彼女のクールな目論見はかなりいい感じで出されていたのではないか。

 そんな好印象を引き出したのはバッキング・ミュージシャンの質が高か
ったせいもあったと思う。バンドはベース、ドラム、キーボードという簡素
な編成ながらきっちりとグルーヴと間(ま)を併せ持つサウンドを出してい
たし、多少年配の女性バッキング・シンガーも確かな音程でラリューをサポ
ートしていた。多彩な音色や奏法により小人数であることをカヴァーしよう
としていたベース奏者(ジェフリー・コナー)はかつてのスティーヴィ・サ
ラス(2004年8月3日参照)のアルバムに名前が見られる人だが、あまり名
前は有名ではないものの、それぞれに確かな仕事をしてきている人達であろ
うと推測する。


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