まず、渋谷・JZブラット(ファースト)で、30年前強に非常に通受けし
た人気を得ていた(いや、デビュー作は全米総合で3位となった)米国ヴェ
テン女性歌手を見る。キーボード(ベース音も左手で兼任)、ギター、ドラ
ムを率いてのもの。ジャズやルーツ・ミュージック要素をポップ・フォーマ
ットにおいて魅力的に(たぶんに、ノスタルジックな情緒を出しながら)と
り入れた事をやった先駆者的存在と言うこともできるのかな。
 
 簡素な音で、アーシーだったりジャジーだったりする曲をこぶしを込めた
りして歌う。この世で一番好きなソングライターという紹介とともに、ボブ
・ディランの曲も歌唱。実は、彼女の新作はボブ・ディラン曲集なのだ。最
後の方で、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ(1999年8月2日)も取り上げ
た、彼女の十八番曲「ミッドナイト・アット・ジ・オアシス」も披露。ぬめ
ぬめした感じのこの曲、初めて聞く人だといまいち曲の輪郭がつかめないも
のになっていたかも。やはり、魅力的にして、難しい歌だな。アンコールに
も応え、一人で出てきて彼女はアカペラで1曲歌う。

 “オールド・タイム・レディ”は本当にオールド(60歳すぎてるしな)に
なっていた。でも、お茶目な感じは悪い印象を残すものではとなかったし、
なにより少ない観客(30人ぐらい)にも係わらず、ちゃんと客とコミューニ
ケートしようとしていて、偉いなとも思った。

 そして、南青山・ブルーノート東京(セカンド・ショウ)で、スピリチュ
アル・ジャズの大巨匠ファラオ・サンダース(2003年4月22日)を見る。
ピアノ・トリオを率いてのもの。ラヴィ・コルトレーンを従えた二管編成に
よる前回のブルーノート東京公演は見ていないが、けっこう2年前(2003年
4月22日)のときとはやっている曲調が大きく違う。前回はフツーのジャズ
曲をやったという印象が強いのだが、今回は全部コルトーン派生の太平楽系
スピリチュアル曲に終始していたんだもの。全日見た人によると、曲目はど
のセットも違い、フツーに4ビート曲をやった時もあり、このセットのほう
が例外らしい。なんにせよ、それゆえに(今の耳においては)聞きやすさ/
とっつき易さは倍増し、満員の客(非ジャズ・リスナー的風情の人が多かっ
た)も大喜び。最後の曲は踊ったり、客とコール&スポンスをしたり。1時
間45分ぐらいやったかな?

 テナー・サックス自体のフレイズは衰えを感じる部分がほんの少しあった
かも。でも……、見てくれ/風情だけでお金がとれる人であり、米国黒人音
楽のワケの判らぬ何かを確かに体現する人。それが、ファラオ・サンダース
なり。

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