週末にどうしても外せない用事があって、車も新しいし行きたい気持ちは
あったものの、今年はフジ・ロックはパスする(一度行かないと行かなくな
りそうで怖いにゃー)。……今年のフジ・ロックに出演した英国人たちを2
か所で見る。恵比寿・リキッドルームのほうは<フジ・ロック・ブリティッ
シュ・アフター・パーシティ>と題されていて(昨年も行われた。2005年8
月2日)、英ニュー・ミュジカル・エキスプレス誌が主催しているようだ。

 まず、渋谷・クラブクアトロで、中国系の血も入っているというUK女性
シンガー・ソングライターのケイティ・タンストール。本国でかなりのセー
ルスをあげているそうだが、ジェイムズ・ブラントをはじめ、英国ってなん
か今シンガー・ソングライター系に対する需要があるんだよなー。
 
 おお、才ある人。ちゃんとした曲を書き、ひっかかりのある声で歌え(主
に、アコースティック・ギターを持って歌う)、バンドともにそれを開ける
人ですね。そして、きっちり公の場で自分を出せて、くだけた態度で客とち
ゃんとコミュニケートもできる人。繊細な情緒を持ついかにも弾き語り基調
の曲から、オールド・ロックっぽい曲(ザ・ウィングスの『バンド・オン・
ザ・ラン』を思わすような、単音のシンセ音が用いられる曲も)、黒っぽい
曲まで、いろんな引出しを持つ。カーキ・キング(2004年8月3日、200
5年3月26日)のようにギターのボディを叩く音やギターのストローク音を
サンプリングし、それを基調の音に設定してから始まる曲もあった。とにか
く、適切で、まっとう。ギター、ベース、ドラム、キーボードがサポートす
るが、バック・バンドというよりはカンパニーと言ったほうがいいと思える
雰囲気があってそれもマル。彼女は、いいバンド経験も持っているはず。こ
こ数年ライヴ・パフォーマンスに触れた新進の女性シンガー・ソングライタ
ーのなかで、一番共感が持てる人だった。

 会場はゲキ込み。800 人ぐらいは入っていたのではないか。クソ暑くて参
った。40分見て、後ろ髪ひかれる思いで移動するが、苦行にならない環境だ
ったら、もっといたかも。

 そして、恵比寿・リキッドルーム。最初に登場したイアン・デューリーの
息子であるバクスター・デューリーは見ることが出来なかったが、2番目の
フィールズはけっこう見れた。キーボードとヴォーカルの女性を含む、5人
組。実際のところは知らないが、大学の同好会あがりみたいな風情を持って
いる連中。基本は、ほのかな青春的な手触りを感じさせるかもしれない飄々
ギター・ロック。けっこう男性と女性が一緒にリード・ヴォーカルを取るの
が面白い。ときに、シューゲイザー的轟音が入るときも。

 続いて、4人組のザ・ライフルズ。基本はパンク・ロック期の心意気あり
きのギター・バンド的表現。リードをとるギタリスト君はU2のエッジのよ
うな奏法をうまいだろ的にかましたりも。そこここ、青い。途中で、飽きる。

 最後は、ミステリー・ジェツ。父親と息子が一緒にやっている、という事
でも話題を呼んでいるが、なるほどねえ。パーカシッョン(中央前方に堂々
とパーカショッン・キットが位置する)、ギター、リード・ヴォーカル担当
の小僧と横でキーボードやギターを弾くちょい渋おやじが親子なのだろうか
。他に、ギター、ベース、ドラム、若いほうはみんなハタチぐらいらしい。
耳年増のお父さんがどのぐらい音楽的イニチアシヴを持っているのかは知ら
ないが、けっこう皆で歌ったりする怒濤のポップ・ロック表現は確かな訴求
力あり。随所に妙な過剰さがあって、それが導く美味しい違和感のようなも
に、なぜか方向性は違うのにぼくはマーズ・ヴォルタ(2004年1月7日)の
ことを思い出したりも。不可解な回路を経由しながら発散に至る感覚や、わ
が道を行くしなやかな強さ〜自由が介在していると思わせるところが重なる
からか。

 こちらの会場は混んでいなくて、途中から冷房がきつくてたまらなくなっ
たナ。そういえば、どのバンドもバスドラの音がボディ・ソニック的に床を
通してどすんどすんと伝わる。この前のバッファロー・ドーターのときもそ
うだったが、ここ(新宿時代から、音は良かった)のPAって普段からクラ
ブ・ミュージック的な仕様でロック・ライヴも行っていたっけか。不自然だ
という声もあるかもしれないが、今の時代、それもありだろうとは思う。

 梅雨明けて早々の今日、昼間もかなり過ごしやすかったが、外に出ると異
常に涼しい。フジの夜もびっくりの肌寒さ、なり。

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