通算二度目となるトゥーサンの今回の来日はコステロの来日公演に合わせ
てユニバーサル・ミュージックがプロモーション目的で呼んでいるのだが、
この日の一般公開のトゥーサンのソロ公演は、せっかく来たんだからライヴ
をやりたいという本人の申し出を受けて実現したのだという。で、7時と9
時に入替え制にて、原宿・ブルージェイウェイ。
  
 ぼくが行ったのは、9時の回のほう。開演間近に店に入ると、なんと客席
にコステロがちょこんとしおらしく座っている。ありゃりゃ。

 前日とは異なる紺色ストライプのスーツを着たトゥーサンがグランド・ピ
アノの前に座ってパフォーマンスは始まった。なるほど、トゥーサンはプロ
フェッサー・ロングヘアやジェイムズ・ブッカー、ドクター・ジョン(20
00年5月24日、2002年3月23日、2005年9月20日)などの秀でたニュー
オリンズ系ピアニストと比べるとタッチが弱い。それは年をとったからで
はなく、ある程度昔から。でも、彼の表現はにはそんなピアノの質感に違和
感を覚えさせないメロウネスやメロディ感覚があるのがポイントなのだ、と
そのパフォーマンスは了解させる。そして、その伸びやかな歌声ともども、
そうした彼の持ち味はロック・ファンにも共有し易いものでもあると今回、
再確認。とともに、そうした味は混血音楽の権化のようなニューオリンズ音
楽のある種の側面をずっぽり体現する人(実際、肌はそれほど黒くない)で
もあるのだな、とも。弾き語りの大メロウ曲「サザン・ナイト」には失禁しそ
うだった。でも、美曲「フリーダム・フォー・ステイリオン」は教会ではや
ったけど、このセットではやらなかったんじゃなかったか(正確なところ、忘
れている)。

 話は前後するが、このセットは中島美嘉も見にきていて、3曲目だったか
は彼女に鬼のように温かい言葉を送りつつ、「ホワット・ア・ワンダフル・
ワールド」をピアノ・ソロで崩し気味に演奏。で、一方のコステロはアンコ
ールあたりで加わるのかと思ったら、本編でしっかり2回登場し、3曲ぐら
いづつ歌う。おお。ここでも本気で彼は歌声を張り上げる。だが、それが自
分を出したいというエゴではなく(自分の喉の訴求力には多大な自信を持っ
ているという事だが)、本当にトゥーサンの持ち味やピアノが好きで、彼と
やるのが嬉しくてしょうがないんだというのを伝えるものだった。
 
 二日間、手が届くような距離でコステロのパフォーマンスに触れて痛感さ
せられたのは、彼は本当に音楽が好きで好きでしょうがない、音楽馬鹿なの
だナということ。その顔つきから、どこか斜に構えたシニカルな人という印
象をずっとぼくは持っていたが、そうじゃないんじゃないか。ちょっと例え
は外れてるかもしれないが、松岡修造のような、なりきり熱血漢系全力投球
型のまっすぐ好漢なんではないのか……、コステロという人は。ぶっちゃけ
、トゥーサンがソロ・パフォーマンスに終始した7時の回を見たほうが良か
ったかもと思ったワタシではあるが、コステロの真実に触れられたような気
分になって、なんかえも言われぬ気持ちになったのも事実なのだ。

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