コステロとトゥーサンの共演アルバム『ザ・リヴァー・イン・リヴァース
』発売を受けてのショーケース・ライヴが、昼さがりに品川・キリスト品川
教会のグロリア・チャペルで開かれた。

 まず、トゥーサンを迎えたシングルを米国で作った中島美嘉が出てきて、
シングル収録の2曲をトゥーサンとともにパフォーマンス。自分のバンド(
なのかな?)に20人のゴスペル・クワイア(うち、8人ぐらいは外国人)、
そして御大のピアノ。へえ、中島美嘉って細い小さな人なんだな。ニューオ
リンズ的アクセントを採用したメインの曲と、自分化しての(ルイ・アーム
ストロングの当たり歌である)「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」。
なんにせよ、トゥーサンはさすがの指裁き。嬉しそうにピアノを弾く。中島
美嘉のことをもっと知りたいと思った。

 そして、トゥーサンとコステロのセットとなる。ところで……。

 かつて熱心にニューオリンズ・ファンク/セカンド・ライン物を追ったぼ
くにとって、トゥーサンは最大級に土下座の存在だ。一方、コステロは土下
座しようと思ったことはないものの、ずっと気にかけているロッカーである
。でも、『ザ・リヴァー・イン・リヴァース』は出来が悪いと、言わざるを
えない。過去に二人の邂逅/共同作業の積み重ねがあろうとなかろうと、ハ
リケーンが来ようと来まいと(カトリーナ・ハリケーンは私の最良のプロモ
ーターというような、あっけらかんとした物言いをトゥーサンはしていたな
)。というのも、ぼくの耳にはあのアルバムでの二人のかみ合わせは水と油
の関係にしか聞こえないのだ。それもこれも、あまりにコステロのヴォーカ
ルが固すぎるため。それ、軽妙洒脱で、グルーヴィなトゥサーンの曲やピア
ノとぜんぜん合わない。あれを聞いて、ぼくは黒っぽい楽曲を歌えるヴァン
・モリソンがいかに偉大なシンガーかも、痛感させられた……。ショージキ
、2度とこんなアルバム、聞けないナとぼくは判断をくだした。なら、ライ
ヴに行かなきゃいいぢゃん。そう、ムカつく人もいるだろう。だが、生でや
るというなら、そりゃチェックはしたくなる。いや、ぼくはトゥーサンを見
たくて行った。だから、彼の指裁きが見えるところにぼくは座った。

 和気あいあいとした感じで、デュオのパフォーマンスがスタート。コステ
ロは基本的にはトゥーサンのピアノに合わせて歌い、たまに生ギターを持っ
たときも。やはり、コステロの声はR&B/ファンクを歌っちゃいけない声
質だとはしっかり思った。声量や存在感はあるが、伸びやかじゃない、しなや
かじゃない、艶っぽくもない。だけど、生で聞いたほうが違和感がないのは
確か。オープナーからステージ下におりて観客に歌わせようとしたりとか、
コステロの本気ぐあいもプラスに働いたか。オフ・マイクで一生懸命、歌っ
たりとか。ほんと、この人はなんでも全力投球なんだな。

 しかし、ちょっとトゥーサンが歌ったりすると、もうコステロ歌うな、横
で黙って立ってろと言いたくなったのも事実。トゥーサンは68歳という年齢
より若く見えたし、元気そう。完全なソロ・アルバム作ってほしいな。少し
前に、ネットで偶然トゥーサンのお気に入りアルバム10枚みたいのを見て、
けっこうヤワなセレクションでへえと思ったけど。

 パフォーマンス後に、二人への質疑応答タイムも。このときもコステロは
ちゃんと答えていたな。感心かんしん。それで終わるはずだったようだが、
二人は予定外のパフォーマンスをまた始める。それが3曲で、全部で11曲。
アルバムに収録されていない曲もやった。聞けば、両者は来週から、ホーン
・セクションなども従えた編成でアメリカのツアーに出るのだという。なら
、この日のギグはいい練習にもなるし、レパートリーはいくらでもあるだろ
う。

 コステロの歌への不満を差し引いても、いい出し物だっと思う。クローズ
ドな催しであり、なるべく自慢げに書くのは避けようと思ってこの項の文章
を書いているが、この日の実演は中野サンプラザあたりで行われるべき質や
重さをもっていたと思う。

 

コメント