イスラエル出身の、ここ10年米国のジャズ界でかなり頭角を著している若
手(といっても30代半ばだが)ベース奏者。ここのところの彼のアルバムに
参加しているピアニストとドラマーを従えた、ワーキング・バンドによるも
の。特に、マーク・ジュリアナというドラマーはかなり若そうだった。

 とってもストーリー性のある、ときにメロディ性も持つジャズを展開。思
っていた以上に、鮮やか。パっと聞いてすぐに思い出したのは、ブラッド・
メルドー(2002年3月19日、2003年2月15日、2004年2月20日)のト
リオ表現。サム・バーシュという今のランディ・ブレッカーを30才若返らせ
たような容姿を持つピアニストはメルドーほどに腕や個性が際立っているわ
けではないが、コーエンの歯切れと含みを併せ持つ生理的に立ったベース
演奏(ときに、弾きながら、パーカッシヴにボディを叩いたりも)で導かれ
るピアノ・トリオ表現はそれに通じる妙味を持つ。楽曲に関してチェックは
入れてないが、おそらくコーエンのオリジナル曲主体だったのではないか。
どれも、1曲10分弱ぐらいのものだったはず。

 ちゃんと視点のある、今のジャズを出しているじゃないかと感心。それは
、門外漢にもとっつき易いインタープレイ〜ジャズでもあっただろう。かつ
てコーエンの名前を広く知らせるきっかけになったチック・コリアのオリジ
ンというバンドのリーダー作が出たとき、“風があるジャズ”という説明の
仕方をしたことがあったが、やはりここにも風というか、確かなひっかかり
や美味しい間の感覚があった。なるほど、コリアはコーエンと出会ってオリ
ジンを組むことを決心したという話もあるが、それも頷けますね。

 突飛というか、ちょっと大げさな書き方になるが、<ジャズとしてのレイ
ディオヘッド表現>というものを、彼らはやんわりと提出していたと思う。
アンコール曲では、エレクトリック・ベースを彼は手にした。南青山・ブル
ーノート東京(ファースト)。



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