シガー・ロス

2006年4月5日
 自我や美意識やストーリーを素晴らしく持とうとする、アイスランドから
世界に飛び出した、“響き”のロック・バンド。パフォーマンスの模様は、
2003年4月14日の項に書いたものと大きく変わるものではない。緊張感
に変わりもっとウェットさが増して(そのため、ドラマーが前より奥に引っ
込んでいたな)いるところはあったものの、我が道を行く、生理的に壮絶な
バンドという印象は同様だ。

 例によって、弦楽四重奏の女性たちを従える。で、今回はその女性4人が
まず登場して、演奏を聞かせる。ラップトップ・コンピューターやヴァイブ
ラフォンやカリンバみたいな楽器などもいろいろと用いてのもので、ノリ(
音楽性ではなく)としてはタウン&カントリー(2003年11月27日、20
06年3月3日)を少し思い出させるかな。バックのサポートの人が飄々と
露払い役を担うということにかけては、ビョーク公演におけるマトモス(2
001年12月5日)と同じだ。

 始まりと終わりは、ステージ前に白い幕を張り、そこに光や映像を照らす
。何からなにまで、雰囲気とか効果とかに留意しながら、光と影が交錯する
ような、余韻が余韻を呼ぶような音楽を送りだす。今回そのパフォーマンス
を見ながらぼくが想起せずにはいられなかったのはビョーク。それは、国籍
が同じとか音楽性ということでなく(でも、やっぱりアイスランドという属
性は大きくモノをいっているのか?)、自分たちならではの確固とした美意
識に支えられた世界を作りだそうという強い意思のようなものによる。それ
が、ハンパじゃない。そして、それが独りよがりや頭でっかちにならずに、
きっちりと質の高いもう一つのポップ・ミュージックになっていることに感
服してしまう。

 会場は渋谷・アックス。鬼のように混み合ってて(お酒を買いに出たら、
入れなくて困った)、繊細なパフォーマンスに集中しづらいというところは
あったのは間違いない。テンポが似ている曲(本当に、どの曲もゆっくり)
が多かったためか、ちょい曲が似て聞こえ、変化が欲しいナと感じるところ
も少しはあった。彼らのような音楽はやはり椅子付きのホールで見たい。本
編は約2時間。

コメント