モダン・ジャズ史上もっともテナー・サックスを堂々と吹ける男がロリンズ
だ。現在75才になる。そんな彼の今回の来日公演のお題目は、最後の日本ツア
ーになるということ。今回ドラマーとして同行し、10年ぶりの来日を果たした
スティーヴ・ジョーダンも目茶忙しいけどロリンズの最後の日本ツアーと聞い
たら参加しなきゃと思ったと言っていたので、宣伝文句ではなく、送り手側に
もそういう認識があるのは間違いない。有楽町・東京フォーラムホールC。こ
の日は追加公演となる、日本公演最終の日。正規公演のフォーラムA公演は休
憩を挟んで2部構成で行われたというが、この晩は一気に2時間パフォーマン
スを続けた。

 トロンボーン(甥のクリフトン・アンダーソン)、電気ベース(ボブ・クラ
ンショウ:1999年7月15日参照)、ギター(ボビー・ブルーム)、ドラム
(ジョーダン)、パーカッション(キマチ・ディニズル)という、彼にとって
は不思議ではないがジャズの王道から見ればかなり変則と言える構成のバンド
を従え、御大は悠々と吹き上げる。「セント・トーマス」他カリプソ・ビート
の曲を3曲、ブルースのコード進行曲を2曲、「イン・ア・センチメンタル・
ムード」他スタンダード系も3曲、など。オープナーの「ソニー・プリー
ズ」という曲はアグレッシヴなビートの曲だった。アンコールを含め全10曲、
彼らはやった。

 けっこう、アウトする感覚のブロウを随所に散りばめていたのにはびっくり
。そして、感心。まだまだ吹けるし、彼はいまだリアルなジャズ・マンだと思
わせるところ、大いにあったもんなあ。『サキソフォン・コロッサス』とかヴ
ィレッジ・ヴァンガードのライヴ盤の再現なぞを求める向きの人以外は、まだ
まだやれるぢゃんという思いを多大に抱いたはず。でも、80年代中期にNYの
美術館の公演中に卒倒したこともあった彼だし、こんご飛行機に長時間乗れと
いうのは酷な注文かもしれない。ともあれ、その格好や仕種さともども格好い
い、なんか味があると思わせるところは多々。やはり、不世出のジャズ巨人で
あるのは間違いない。

 先に触れたスティーヴ・ジョーダンは80年代からぼくのアイドルの一人で(
24丁目バンドにはまったことはなかったが、スティーヴ・カーン・アイウィッ
トネスは大好きだった)、この朝(9時台。もう、早起きなんだから)にイン
タヴュー。80年代中ごろにジャズ/フュージョン系からロックのほうに大幅に
シフトし、キース・リチャーズ、ソウル・アサイラム、ファビュラス・サン
ダーバーズ、JSBX(ジョーダンは、ジョン・スペンサーと同じ弁護士を雇
っているらしい)他のアルバム・プロデュースをはじめ、いろんなTV/映画
/DVD映像のミュージカル・ディレクターをいろいろとこなしている(珍し
いところでは、民主党大会のイヴェントなども)、まさしく米国音楽業界セレ
ブの一人。スティーウィ・ワンダーが国家を歌い、ストーンズがハーフ・タイ
ム・ショウに出る予定になっている来年のスーパーボウルの音楽監督も彼がす
ることになっている。ウィリー・ウィークスを引っ張りだし、リズム・セクシ
ョンを組んでここのところよくレコーディング・セッションに参加している彼
だが、来年はそのコンビでエリック・クラプトンをバックアップするという。

                                  

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