ジューサ

2005年11月4日
 スティング、リチャード・ボナ、ミシェル・ンデゲオチェロ、P.J.ハー
ヴェイらを同様のヴィジョンを持つ人の名前にあげる(かつてやった電話イン
タヴューによる)、キューバの開かれた新世代シンガー・ソングライター。南
青山・ブルーノート東京、セカンド。ほう、華奢な人なんだな。ベーシストと
しても知られる彼女だが、今回の来日はすべてギターを弾きながら歌い、キー
ボード、ギタリスト、ベース、ドラム奏者をバックにおいてのもの。その2作
目はミシェル・ンデゲオチェロ色がけっこう感じられるものだったが、ライヴ
ではそういう色は皆無。ジョニ・ミッチェルみたいだなあと思わせる曲は1曲
あったけど。

 淡々と、ブラジル色やラテン色やジャズを通った流動的なポップ表現をきか
せる。が、ぼくにとってはなんか色が薄いかなと感じる部分も。まあ、それも
“身内”のアーティストと感じるからかもしれないが。一番、感銘を受けたの
は、彼女の逆三角形のような形をした珍妙なヘア・スタイルだったかも。

 あと、もう一つ彼女の魅力関知に集中できなかったのは、同行キーボード奏
者のロベルト・カルカセスを後日取材することになっていて、彼のほうを結構
注視しちゃったせいは少しあったかも。2年前に話題になった『クール・クー
ル・フィーリン』他、彼の係わったプロダクツをチェックすると本当に才があ
るなあと思わずにはいられない人。キューバン・ラテンの伝統や妙味を知りつ
つ、ジャズ〜R&B〜ヒップホップというアメリカ音楽の流れも異常なほど俯
瞰し捉え、それらを重ねた先に美味しい“音楽の園”を描くことができる驚異
のタレントで、彼のリーダー・グループであるインタラクティボ(ジューサも
その構成員)の近く仕上がるだろう新譜も凄く良く出来ている。ラテンとジャ
ズとか、ラテンとフュージョンという重ね方をする人はいろいろいるが、彼ほ
どアメリカ音楽の総体をしっかりとモノにしちゃっている人も珍しいのではな
いのか。そんな彼は来年公開されるヴィム・ヴェンダースの映画『ミュージッ
ク・クバーノ』にもフィーチャーされる。彼も当然演奏している、同映画のク
ライマックスのシーンとなるらしい鶯谷の東京キネマ倶楽部(2003年6月
28日参照)でのライヴ映像はうわあって感じ(去年、ご一行が来て、撮ってい
ったという)。インタヴューのときの彼、同じヴィジョンを持つ人として、さ
らりとジャミロクワイの名前を挙げたのには少しびっくりでした。

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